金正恩氏「ニセ焼酎で公開処刑」事件で警察が動く

金正恩氏「ニセ焼酎で公開処刑」事件で警察が動く

金正恩(キム・ジョンウン)氏

一時は、北朝鮮の市場で流通する工業製品の9割を占めるとも言われていた中国製品。それが北朝鮮での売れ行きを落としつつあるという。そのきっかけになったのは、人民保安省(警察庁)が出したある布告だ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、人民保安省は今年6月11日、偽造品の製造、密輸、密売を禁止し、違反者は厳罰に処すという布告を発した。販売者は1ヶ月以内に自ら申し出なければ、地位を問わず利益、商品はもちろんのこと、材料、工場、生産設備を没収して、営業を中止させるという厳しさだ。

それ以降、中国製の加工食品の売れ行きが落ち込んだ。

中国製の加工食品は、卸売業者が5日ごとに市場に配達することになっているが、布告後は15日が過ぎても新しい商品が届かない状態だ。当局の統制が強化されているものによると思われる。

また、布告には「違法に製造された輸入食品を食べると免疫力が低下し、子どもの場合は下痢や嘔吐を誘発しうる、さらには、妊娠した女性が食べると奇形児の出産のリスクがある」と書かれていることから、消費者の間では中国製に対する不信感が高まりつつある。

初夏を迎え食品衛生に神経を尖らせている人が多い中で、黒い卵(ピータンのことと思われる)、モミジ(鶏の足)、ソーセージなど中国で一般的な加工された肉類に対する拒否感が高まっている。さらには「カビが生えていた」「針が出てきた」などという噂も広がり、中国製の人気は下がる一方だ。

中国製の在庫を抱えている商人は値下げしたり、「食べても問題なかった」との宣伝文句で、在庫を一層し損害を被らないように必死だ。長年、北朝鮮の人々の食卓を支えてきた中国製の食品がもはや「不良品」扱いを受けるほどになってしまっているのだ。

中国製と言えども、質や価格は千差万別だ。2000年代に入ってから食の安全を脅かす事件が多発した中国では、消費者の目も非常に厳しくなっており、「安かろう悪かろう」ではもはや売れなくなっている。そのような製品は、ミャンマー、ラオスなどの周辺諸国に輸出されていると言われているが、それが北朝鮮にも流入しているものと思われる。

今回の布告の背景には、当局が密造酒の対処に苦慮しているということがあると見られる。

今年の3月、軍事境界線にほど近い開城(ケソン)にある、開城松岳食料工場の「松岳(ソンアク)焼酎」のラベルを貼った密造酒が大量に出回り、亡くなったり失明したりする人が続出している。それも、国営の印刷工場が印刷したニセのラベルを使ったものだ。

この事件には金正恩党委員長も激怒し、密造酒の売買に関わった数人が公開処刑されたとの情報がある。

当局は、消費者に警告を発したり、講演会で密造酒を恐ろしさを知らせるなどの対策に当たってきた。

中国製の代わりに北朝鮮の消費者が買い求めているのは、国産の食品だ。

1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を前後して、国営食品工場がまともに操業できなくなってしまったが、その穴を埋めたのが中国製だった。

そんな状態が長年続いてきたが、金正恩氏は輸入病(何でもかんでも輸入に頼る傾向)の根絶と、国産品の生産、愛用を奨励する運動を提唱し始めた。徹底せずにうやむやになったようだが、中国製品の販売禁止令が出されたことすらあった。

当初は「高くて質が悪い上に手に入らない」と評判は今ひとつだったが、徐々に質も向上、生産量も増えつつある。もちろん、価格や供給量の面でまだ中国製をしのぐほどにはなっていない。

布告が出されて以降、市場の商人は平壌や地方都市の食品工場製の商品を扱う量を増やしている。北朝鮮当局が、食の安全をネタにして消費者の不安を煽り、国産品のシェア拡大を狙っていると考えるのは、穿った見方だろうか。

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