北朝鮮女性店員が日本語でAKBを歌うバンコク北レスの絶対エースに会ってきた

バンコクの北朝鮮レストランを紹介 「雪の華」など日本語で歌う曲が半分のショーも

記事まとめ

  • 筆者がバンコクの北朝鮮レストラン「木蘭レストラン」と「ヘマジ館」をレポート
  • 木蘭には日本語や中国東北弁が話せる北朝鮮女性スタッフがいるそう
  • ヘマジ館の李同務はNGT48の中井りか似で、日本語力はネイティブクラスだという

北朝鮮女性店員が日本語でAKBを歌うバンコク北レスの絶対エースに会ってきた

北朝鮮女性店員が日本語でAKBを歌うバンコク北レスの絶対エースに会ってきた

都会的で洗練された玉流とヘマジ館と比べローカル感あふれるパタヤ木蘭のレシート(右)

 2017年秋、国連制裁強化の足音が忍びよる暗々たる空気だったバンコクの北朝鮮レストラン(以下、北レス)についてお伝えしたとき(参照:”閉店続く「北レス」。まだ3店舗残るタイ・バンコクの北レスに行ってみたが……”–HBOL)から北朝鮮をめぐる情勢は一転、今月末には2度目の米朝首脳会談がベトナムで開催されることが正式発表された。

 そんな中、昨年も飽きもせず6月から8月、9月、12月とタイの北レスへ通い続けた著者が満を持して注目の2店の現状をお伝えしたい。

◆変わる北朝鮮情勢。一方タイの北レスは……

 まずは、パタヤにある北レス「木蘭レストラン」だ。タイ最大の歓楽街パタヤにはあるが、ほとんど知られていない。なぜなら、賑やかなビーチサイドから東へ約15kmも離れているからだ。タクシーはメーターを使わないので、レンタルバイクが便利だ。

 木蘭は、マープラチャン湖近くあり、周辺は工業地帯で、韓国企業も多く、韓国企業の駐在員や出張者をターゲットにしている。近くにはゴルフ場もあるのため土日は、プレーの後に北レスでおつかれさん会に利用されるようだ。

 木蘭は、「マグノリアスパタヤホテル」の敷地内にあるため、「ブッキングドットコム」を見てもきちんと紹介されている。ホテルの敷地内とはいえ、木蓮自体はプレハブのような簡素な建物の2階にある。

 ホテルのすぐ目の前はマープラチャン湖のため静かだが夜間は真っ暗でタクシーもほとんど通らない。ここが郊外とは言えパタヤとは思えないくらいローカル北レスいや北食堂という感じがする。

 長方形の店内は20席ほどあるテーブルフロアと奥にステージスペース、さらにその奥には7、8人ほどがカラオケも楽しめる個室が完備されている。

 客数が集まれば、午後7時半ごろから恒例のステージショーもあるがローカル感があってまったりしている。

 著者が昨年、2度行ったうちの1回はステージショーなしの悲惨な日だったが、暇なのか、北朝鮮女性スタッフが話し相手をしてくれる。3人ほどのスタッフの中には、なぜか日本語が話せるスタッフがいたり、30代前半くらいで凛とした顔立ちの美人リーダーは、以前、3年間、中国瀋陽の北レスにいたらしく中国東北弁がペラペラだったりと、変なところで盛り上がったので退屈はしなかった。

 スタッフによると、木蘭はこの場所で2009年から営業しているそうだが、北マニアにも知られていない。まさに秘境北レスの名がふさわしい。

 さて、食事を終えて帰ろうとするもタクシーがつかまらない。さすがにグラブでも郊外過ぎてマッチングできない。

 すると、ホテルの敷地内でヤンキー座りをしている2人の男性と目が会う。朝鮮語っぽい言葉を話していたので、「どこの人ですか?」と英語で尋ねると、「コリアン」と返事が。そこで、朝鮮語で、「(北)朝鮮の人ですか?」と聞いたら、数秒の沈黙のあと男性は、「はい」と認めた。

 タクシーがなくて帰れないと伝えると、「俺が送ってあげるよ、400バーツ(約1400円)で」。

 木蘭へ来るときのタクシーでも言い値で300バーツ(約1050円)だったので、完全に足元を見られているが、他の手段がないので、お願いすることに。

 しばらくすると、やってきたのは黒いトヨタのミニバン。どうやらこのミニバンで普段スタッフを送迎しているようだ。

 助手席に乗ると、ホテルの場所を伝えて発進。金と名乗る20代半ばくらいの若い男性は、タイへやってきて1年という。北レススタッフの監視役兼世話役のような役割のようだ。

「タイは住みやすいか?」と尋ねると、「とても快適」とのこと。彼は英語が達者で思った以上に饒舌だ。帰国はしないが、たまにカンボジアとかベトナムへ出張すると金氏は話す。パタヤでは、日本人が経営する旅行会社とも交流があるとかで、彼のスマートフォンで写真を見せてくれた。

 金氏が車内で饒舌だったのは、おそらく、盗聴器がついていないからだろう。彼は、いつか東京へも行ってみたいとも話していた。

◆バンコクの「ヘマジ館」で絶対エースに会う

 続いては、バンコクの北レス旗艦店であり、著者が勝手に世界一の北レスと呼ぶプロンポンの「ヘマジ館」だ。

 何か世界一かといえば、ステージショーが最長だと50分にも及ぶことがあり、世界一にふさわしいからだ。以前の記事でも紹介したが、昨年、タイの「BNK48」がカバーして大ヒットした「恋するフォーチュンクッキー」を日本語で完コピ披露し、映画化で話題の「雪の華」など日本語で歌う曲が半分くらいというこれも世界でここだけだろう。

  ヘマジ館の敷地内には日本人が店長を務める「北海道レストラン 原始焼」という日本料理店があり両店を一緒に写すとインスタ映えしそうだ。

 ヘマジ館の入り口すぐ右にはレジがあり北朝鮮雑貨や白頭山ワインなどを販売する売店も兼ねている。

 1階は、テーブル席で30人は座れそうなフロアとステージスペース。3階は、カラオケ完備の個室が4部屋、それぞれが4、5人から10数人ほど入れる広さがある。個室使用料は一律1000バーツ(約3515円)。2階は売れているのか不明だが北朝鮮の絵画を展示販売している。

 ヘマジ館最大の魅力は店のエース、李同務だ。韓国は李をイと読むが、北朝鮮ではリと読む。同務は、同級生や同僚などを意味する言葉でトンムと読む。

 李同務は、芸能人に例えると「NGT48」の中井りかに似ている。李同務のすごいのは歌や踊りだけでなく、日本語力で、ほぼネイティブクラスだったりする。しかも独学で勉強したというから驚愕だ。YouTubeにアップされているMBCのニュース映像に写っている緑色の女性が、李同務である。

 昨年12月に行ったときには、客入りが悪くステージショーなしの残念な日だったが、李同務が「血液型は何型ですか?」と聞いてきた。北朝鮮はO型が多いとされ、血液型占いはもちろん、そもそも血液型を確認する習慣が存在しない。

 日本人客が李同務へ血液型を聞きまくるからバンコクで調べて初めて自分がO型だと知ったそうで、今では日本人客へ聞いているそうだ。可愛くて気配りもできるので日本人ファンが多いのも頷ける。

 絶対エース李同務は、ヘマジ館へ来て今年で3年目という。通常、北レスでは3年周期で帰国や移動するので李同務と会えるのもどうやら今年で最後になりそうだ。

◆冷麺が美味しいのはスクンビットの玉流

 最後にバンコクの他の北レスについてご紹介する。2017年の記事で紹介した残念な記憶が根強い「平壌アリランレストラン」は、移転するも移転先の賃貸契約でトラブり、現在も休店中。

 もう1店はスクンビットの中心地アソーク、ソイカウボーイから徒歩2分でスクンビット通り沿いという抜群のロケーションにある「玉流レストラン」。この店は、2017年5月にエカマイから移動してきた店だ。

 玉流は、場所がいいので韓国人ファミリーが多く、ステージショーも韓国人を意識したようなムードあふれる歌謡曲が多い傾向にある。この店にはなぜかタイ人の男性スタッフがいる。

 というわけで、現在、バンコクとパタヤの北レスは3店営業している。この中で平壌冷麺が一番美味しいと思うのは、玉流。同店は便利な場所なのでササッと行って味わってみてはどうだろうか。

<取材・文/中野鷹 Twitter:@you_nakano2017>

関連記事(外部サイト)