コロンビアの麻薬組織が「スマート」化。市場を欧州に求め復活の兆し

コロンビアの麻薬組織が「スマート」化。市場を欧州に求め復活の兆し

逮捕されたホセ・バイロン・ピエドゥライタは牧畜業で成功しているビジネスマンでもあった。彼について報じる「Infobae」紙

◆「スマート」になるコロンビアの麻薬組織リーダー

 水面下において世界規模で深刻な社会問題となっている麻薬の蔓延化。米国と同様にヨーロッパでも麻薬の浸透は同時に犯罪の多発化を誘っている。その2大供給拠点はメキシコとコロンビアである。

 コロンビアの麻薬組織カルテルの最近のリーダーたちは一見成功している企業家といったイメージを社会に与え、嘗ての血で血を洗うマフィアのリーダーといった様相とは全く異なった姿で登場しているのが注目されている。そして彼らは金融操作などにも詳しく、また邪魔な人物は嘗てのような拳銃で殺害するというのではなく、お金で誘う手段を選んでいるという。(参照:「Infobae」)

◆コロンビアからメキシコへ、麻薬供給国の世代交代

 麻薬が世界規模で普及を始めたのは1980年代である。それに貢献したのがコロンビアの当時最大のカルテル「Cartel de Medell?n」であった。そのリーダー、パブロ・エスコバル(Pablo Escobar)は麻薬王と呼ばれ、現在米国の刑務所に収監されているメキシコ人エル・チャポに匹敵する、あるいは彼以上の影響力を持っていた人物であった。

 エスコバルの生活ぶりは豪華で、米国やアフリカから珍しい動物を輸入して自分だけの動物園をつくり、世界のクラシックカーのコレクションにも熱中していた。彼にとって邪魔な人物は容赦なく殺害した。

 彼は1993年にコロンビア軍に包囲されて銃撃戦で死亡した。また、彼と同様に当時活躍していたのは「Cartel de Cal?」のロドリゲス・オレフエラ(Rodriguez Orejuela)兄弟であった。しかし、この兄弟も1995年に逮捕されてからはコロンビアからは絶対的影響力をもったリーダーがいなくなっていた。しかも、カルテルの組織も次第に小規模化していった。

 その間に、コロンビアの麻薬の中継地として存在していたメキシコが麻薬消費国として最大の市場を抱えた米国を隣国に控えているという地理的条件からメキシコがコロンビアに代わって米国への麻薬供給国として成長するのであった。その一貫で頭角を現したのがエル・チャポであった。

◆メキシコに覇権を譲ってもコロンビアのコカイン生産量は衰えなかった

 しかしながら、メキシコの台頭の一方で、コロンビアのコカインの生産も衰えることなく、逆に生産量は増加するのであった。

 2010年にサントス大統領が就任した時のコカの作付面積は5万ヘクタールであったのが、彼が任期満了で退任して昨年8月ドゥケが大統領に就任した時にはコカの作付面積は20万9000ヘクタール、コカインの生産量は921トンにまで増大していたのであった。(参照:「El Mundo」)

 サントスの政権時にコカインの生産が増大したというのも一つの理由がある。コロンビアで半世紀続いたゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)との和平協定を結ぶことをサントス前大統領は優先して、彼らゲリラ組織の主要な収入源となっていた貧困層の農家が栽培するコカの生産を極度に抑えようとはしなかったのである。

 ただ、貧困農家にも和平協定を支援させるべく農家がコカの栽培を「自主的に」止めて他の農作物への転換するように政府は促した。そして、コカの栽培を放棄する代わりに政府は農家に助成金を出すということにしたのである。(参照:「El Pais」)

 しかし、この策は功を奏しなかった。コカの栽培ではなく別の作物に代えても十分な収入が得られないからである。そして、コカの栽培を放棄したといっても、政府の監視外の土地でコカの栽培を行っている農家も存在していたのである。

 このような事情からコカの栽培は急増していったのである。

◆企業家然とした麻薬組織へ

 そして現在、このコカインをこれまでとは異なったイメージを与える企業家然としたリーダーが率いる組織が密売に精を出しているのである。

 例えば、ホセ・バイロン・ピエドゥライタ(通称エル・アラベ)はカリで麻薬のビジネスを開始。しかし。表向きは牧畜業で成功している企業家だったのである。だから、警察も彼の存在に最初は不審をもたなかったそうだ。しかし、悪行はいずればれる。現在、彼は米国の刑務所に収監されている。

 彼のような表向き成功している企業家といったイメージを当えている麻薬密売人は多くいると見られている。

 また、彼らはコカインを米国市場に向ける以上に、ヨーロッパへの密輸を発展させているそうだ。米国市場にはすでにメキシコのカルテルが根を張っている。それと直接対峙するのを避けてヨーロッパの市場を相手にしているのだ。

 しかも、その方がより良い値段で捌ける。コカの米国市場での卸相場はキロあたり2万から2万5000ドル(275万円)。ヨーロッパだと同じものが3万5000ドル(385万円)で値が付く。更に、中国だと5万ドル(550万円)、オーストラリアは10万ドルで(1100万円)で密売できるそうだ。(参照:「BBC」)

 今、エスコバル以降消滅していたコロンビアの麻薬密売人が復活し始めているのである。

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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