北朝鮮高官の大連視察が増加。その背景にあるもの

北朝鮮高官の大連視察が増加。その背景にあるもの

大連を走る2階建てバス

 中国東北の大連は、昨年5月に金正恩党委員長と習近平国家主席との中朝首脳会談を行った場所だ。両首脳の会談以降、北朝鮮の高官クラスの大連視察が増えているという。

◆なぜ地方都市である大連なのか?

 大連市の人口は約600万人(2017年11月発表)。これだけ見るとさすが中国、人が多いと思うかもしれないが、中国は面積も広い。大連市の面積は新潟県に相当し、東京23区の21倍強もある。

 大連は人口600万人でも中国全体の人口ランキングでは25位くらいの中堅都市で日本だと姫路市(約53万人・2018年)あたりの順位の中核都市というイメージだ。

 しかも、大連は、権力闘争に敗れて失脚した薄熙来元市長の影響で、中央政府からの締め付けが厳しく景気が鈍化。大連がある遼寧省は中国全土で唯一のマイナス成長を記録するなどあまり明るいニュースは聞こえてこない。

 しかし、どうやら北朝鮮は大連を首都平壌の都市モデルとして視察回数を重ねているようだ。

 なぜ大連をモデル都市にしているのか。それは平壌と大連の地政学的、環境面が近いからだろう。

◆環境的に類似点が多い平壌と大連

 大連市全体の人口は600万人ほどいるが、大連の中心部を形成する6区で見ると、人口は約290万人、平壌約220万人。面積、大連約2400キロ平方メートル、平壌約2600キロメートル。

 平壌から大連への直線距離は約360kmと東京から京都くらいの距離と近い。そして、何よりも北朝鮮がもっとも重視する平壌との共通項は気候の近さだろう。

 春夏秋冬がある大連と平壌は、ほぼ同緯度に位置し、冬は長く厳しく、梅雨はなく、夏はカラリと乾燥して過ごしやすいと両都市は気候も近い。この点が大連を平壌のモデル都市にしている大きな点の1つだと思われる。

 北朝鮮が上海や深センをモデル都市にしないのは、あらゆる点が天と地ほどに違いすぎて、平壌の将来像がイメージできず、モデルにならないからだろう。

 また、2月末に米朝首脳会談が行われたベトナムの首都ハノイもかつてはモデル都市の候補の1つだったようだが、現在、その動きは活発ではない。ベトナムは一党独裁の社会主義体制を維持しながらドイモイ政策によって急速な経済発展を遂げているので参考になりそうであるが、気候が違いすぎる。

 ハノイにも四季はあるが、夏は高温多湿、冬といっても最低気温が10度を下回るとトップニュースになって大騒ぎになるくらいの気候だ。年間最低気温がマイナス15度に達し、毎年のように冬の暖房燃料調達が死活問題になる平壌とは生活環境が違いすぎるのだ。

◆公共インフラなど多岐に渡り視察

 北朝鮮からの視察団の手配をしている大連の旅行会社によると、視察先は、道路管理やごみ処理システム、冬場のお湯暖房供給など市民生活に不可欠な公共インフラ施設の視察から外資も含む大規模工業団地の運営会社、スマートフォン用のアプリを開発するIT企業など多岐にわたっているようだ。

 大連は、中国の都市では創成期に日本企業を中心とした外国企業の誘致を成功させた実績がある。北朝鮮はそのへんの経験やノウハウを参考にしているのかもしれない。

◆視察団は金正日総書記宿泊の「聖地」を熱望

 北朝鮮からの視察団のほぼ全員が宿泊先として希望するのが「フラマホテル」だ。同ホテルは、中国東北3省初の5つ星ホテルだが、30年以上の歴史がある古いホテルなので、現在、大連の5つ星ホテルの中では、中の下くらいの価格帯となっている(公式サイトにて連休を避けた4月中旬で調べると1泊約1万4000円ほど)。

 日本人の出張者からするとさほど高額な価格帯ではないが、北朝鮮の物価かからするとかなりの高額になるだろう。しかし、それでも視察団のほぼ全員が異口同音にフラマホテルを熱烈に希望するのは、2010年5月に金正日総書記がこのホテルに宿泊したからだ。フラマは北朝鮮人にとっては憧れのホテルであり、むしろ、フラマ以外の選択肢はないのかもしれない。

「帰国したら家族や親戚に写真を見せて自慢できると話していました」(旅行会社代表)

 大連は中国の1地方都市であるが、金日成主席、金正日総書記、そして、金正恩党委員長と3代が訪れ、しかも、3人とも宿泊している稀有な都市だったりする。この点から考えると、大連は、ずっと以前から北朝鮮にとって熱い視線が注がれ続けてきた都市だったと言えるのかもしれない。

<取材・文・写真/中野鷹(Twitter ID:@you_nakano2017>

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