夢を見ることすら厳しい韓国の就活事情。しかし、厚い壁を破る若き成功者も

夢を見ることすら厳しい韓国の就活事情。しかし、厚い壁を破る若き成功者も

夢を見ることすら厳しい韓国の就活事情。しかし、厚い壁を破る若き成功者もの画像

 日本の労働市場が人手不足に悩まされる一方、韓国では若者の失業率の上昇が問題となっている。’17年には青年失業率(15〜29歳)が過去最悪の12.3%を記録し、その後も劇的な改善は見せていない。’97年のアジア通貨危機以降、韓国では少なくとも’00年からこの状態が続いており、解決に至っていない。

◆就活エリートたちの憂鬱 働けるだけマシか、それとも

 韓国の激しい就活戦争を乗り切った勝者たちにも、彼らなりの悩みがあるようだ。日本の芸能界に興味があったというチェ・スミンさん(仮名・45歳)は偏差値中位の日本の国立大学を卒業後、韓国で就職活動をしたが軒並み失敗。

「東大ならまだ違っていただろうけど、当時は日本の大学は学歴として扱われませんでした」

 そうして1年が経過後、日本語人材を求めていたベンチャーに拾われ就職。その後、韓国の超有名芸能事務所の日本支社に転職。年収は800万円まで上がった。順風満帆なキャリアは「韓流のおかげ」だといい、日韓の職業意識の違いをこう分析する。

「日本人は、どんな仕事でもある程度満足するが、韓国人はヘタに学歴を積んだプライドがあるからか、常に上を目指そうとする。僕にも少なからずそういう面はあると思います」

 現在は知人に誘われ韓国で働いているが最盛期ほどの収入ではなく、仕方ないと思う半面、もっと上を目指したい気持ちがくすぶっているという。

◆充分なスキルを身に着けても実現できない夢

 そして日本でも有名な某大企業で勤続5年目となるオ・テグさん(仮名・35歳)。英語、韓国語、スペイン語と中国語の4か国語ができ、IT関連の各種資格を持つハイスペック人材だ。日本でいうMARCHにあたる大学を2年休学し、海外を放浪。帰国後、半年ほどかけて就活を行った。エントリーした50社中、最終面接にたどり着いたのは5社で、そのうち大企業数社から内定を獲得。その他大勢に比べるとはるかに恵まれているように見える彼にも、悩みはあるという。

「業界も社風も保守的で、めったにイノベーションがないので業務が単調。内定していた他の会社にすればよかったと悔やまれます。かといって辞めても僕の年ではもう他業種への転職は厳しい」

 最近生まれたばかりだという子供に、就職競争をさせたいか?という問いには「できればさせたくない」と首を横に振った。

 地方都市出身で現在、ソウル市の公務員であるカン・ジョンナムさん(仮名・39歳)の幼い頃からの夢は、シェフになることだった。そのため日本では法政大学レベルのK大学で調理学を、同大学院では食品学を修めた。その後、そこそこの企業に就職し退社。いよいよシェフに……とはならなかった。

◆個人店はすぐに大企業に看板を吸収されてしまう

「韓国では個人店はすぐに大企業に看板を吸収されてしまうし、店を出す資金もなかった。アルバイトでは暮らせないし、就職以外に生きる選択肢がなかったのです」

 1年かけて就活、晴れて公務員に採用されるも毎朝9時から22時まで働き、年収は3500万ウォン(約345万円)。サムソンに就職した同級生は年収1000万円だ。

「貧すれば鈍する」というが如く、夢を見る余裕すら奪う厳しい就活事情が窺えた。

◆同調圧力をぶっちぎった韓国の若き成功者たち

 このように、学歴もスペックも十分にあるように思えても苦悩を抱えざるを得ない韓国の就活事情。それならば、と個人店を出そうにも大企業に吸収されてしまう現実。

 そして、一度脱落すると復活が難しい韓国社会では、特に若い世代の起業は危険視される傾向が強いのだ。また、成功するには家柄と裕福な親からの援助が必須と信じられてきた。

 だが、’17年に発売された書籍『韓国の若き富豪たち』(イ・ジニョン著)には徒手空拳から成功を収めた平均年齢33歳(当時)、61人のサクセスストーリーが記されている(以下、年齢は刊行当時)。

 3度の起業失敗を経て世に出した視覚障害者支援ガジェット「DOT ウォッチ」が年商50億円、GoogleとUberとも共同事業を行うキム・ユジュン氏(29歳)。大学を中退・渡米し開発した体重管理アプリ「noom」がDL数世界一、売り上げ10億円、資金調達50億円を達成したチョン・セジュ氏(37歳)。平凡なOLだったユン・ギョン氏(34歳)のハンドパック販売業「エンジェルアロマストーリー」は11億円の輸出企業に。男性コスメブロガーで兵役中も化粧をしていたキム・ハンギュン氏(32歳)が立ち上げたコスメブランド「コストリ」は現在、社員たったの24人で年商200億円を突破……など才気溢れるエピソードが綴られている。

 親の零細事業を受け継いで成功させた例も。15歳のときに両親が生産するサツマイモの販路をオンラインで拡大し成功を収めたカン・ポラム氏(21歳)、ナムル当日配達サービス「ナムルトゥデイ」のソ・ジェホ氏(28歳)もその一人だ。

 共通点は韓国の同調圧力や因習に縛られていない点だが、その一方、十分に成功しているにもかかわらず「大企業に就職しなかった」ということでいまだ親に認められていない、あるいはまだ親に言えてない人もいるという。

 ただし、こうした成功者たちの存在が、韓国内の閉塞感を打破するきっかけになるかもしれない。

<取材・文・撮影/和場まさみ 小野田衛 安宿緑 安英玉>

― 超絶格差社会 高学歴貧困in韓国 ―

関連記事(外部サイト)