「新車志向」のタイ人。どうやって平均所得からしたら割高な「新車」を買うのか?

「新車志向」のタイ人。どうやって平均所得からしたら割高な「新車」を買うのか?

タイでは高級車は特に割高で、日本車に人気が集まる

◆イメージに反して物価が高いタイ

 日本のテレビ番組などで「タイは物価が安いので、人気の移住先」といった前提でタイでの暮らしを紹介する番組がときどきあるが、何年前の話をしているのかと、タイに関わって20年経っている筆者は言いたい。

 毎日屋台でタイ料理だけを食べていれば確かに安く暮らせるが、案外、タイ料理は油が多く、日本人の体質に合わない。和食を食べると日本よりも高くつく。

 物価の上昇も著しいので、タイはいろいろなものが高い。携帯電話の端末や電化製品なども日本より割高だ。その中でも特に自動車はたとえタイ国内生産であっても日本の1.5倍から2倍の価格帯になる。

 たとえばホンダの「フィット」はタイでは「ジャズ」という名称で、日本はRSというクラスが小売り希望価格が約205万円に対し、タイ生産で若干仕様は異なるが同じRSで約74万バーツ(約258万円)である。輸入車になればもっと高く、税金が高めに設定されるスポーツカーなら日本円で3倍前後にもなる。

 平均所得から考えれば車は贅沢品ではあるが、公共交通機関があまり発達していないタイは車は必需品だ。ただ、タイは中古車も高く、新車購入は高くつくけれども、高く売ることができるため、うまく売り抜けることができればトータルで支払う額を安く抑えることができる。つまり、タイでは新車を買った方が得なのだ。

◆平均所得からしても贅沢品の車をタイの人はどう買うのか?

 いずれにしても新車は高い。そんな中で一般タイ人はどのように安く新車を購入するのか。これは日本にはない購入方法がいくつかある。変わった方法では、タイ税関が開催するオークションという手がある。

 税関オークションでは輸入車に限られるが、税関が差し押さえた輸入車が出品される。タイは中古車の輸入が原則禁止のため、基本的には新車だ。高い税金を払えなかったり、密輸で差し押さえられたフェラーリなどの高級車が一般市場価格より安く手に入るのがこのオークションのメリットになる。政府が主催するわけだが、キャンペーンガールなども立つなどタイらしさのある雰囲気で、参加者も楽しそうである。

 ただ、当然スポーツカーは安いとはいえ、数千万円レベルで最低価格が設定されるので一般的とは言えない。一般的な所得世帯が安く新車を手に入れたい場合、向かう先はモーターショーである。

◆日本のそれとは大きく違うタイのモーターショー

 日本のモーターショーと言えば各自動車メーカーが新作を紹介したり、コンセプトカーを発表し最新技術をアピールする面が強いだろう。しかし、タイのモーターショーも技術公開や新車発表があるにはあるが、そもそもタイは日本や欧米のメーカーの生産拠点であり、開発はほとんど行っていない。また、日本よりも販売する車種も少なく、タイの車マニアを満足させる展示もできない。

 そのため、タイのモーターショーは技術面より新車の商談会場としての側面が強い。どのメーカーも新車を並べる横に商談用のテーブルを並べる。メーカーによっては展示場よりも商談スペースの方が広いのではないかというところもあるほどだ。

 タイのモーターショーも日本同様にキャンペーンガールが表に立つ。タイのカメラ小僧たちもこぞって撮影に来る姿は日本と変わらない。また、やはりメーカーがかける費用も違うため、こういったタレント業の女性たちにとってもモーターショーに立てるということはキャンペーンガールとして最高峰の位置にいると言える。

 しかし、メーカーがさらに力を入れているのは営業スタッフだ。タイ全土から優秀な営業マンが呼び寄せられ、開催期間に集中して売り込みを行う。特にモーターショーで契約が成立すれば、買う側にしても市中で普通に買うよりもローンの金利や保険が安くなるなどのメリットがある。安く新車を買いたい人はモーターショーの開催を待つ。タイでは年に数回、モーターショーがある。「バンコク・インターナショナル・モーターショー」、「モーター・エキスポ」、「バンコク・インターナショナル・オートサロン」などがあり、購入チャンスも多い。

◆労働許可証があれば日本人でも購入可能

 2019年3月27日〜4月7日には「第40回バンコク・インターナショナル・モーターショー」が開催された。

 楽天家の多いタイ人も、このところ「タイは不況だ」と言い始め、それに合わせてバンコクなどは治安悪化が問題になっている。その状況もあってか、この開催は前年から2万人減の160万人の来場者数となった。ピークはアジア通貨危機前年の1996年、第17回の2,087,539人。その後150万〜180万人の間で推移し、近年では第33回(2012年開催)のおよそ196万人が訪れたのが最高記録だ。

 それでもこの第40回開催は主催者発表によると受注台数が自動車で前年比3%増の37,769台となった。メーカー別では1位が「トヨタ」、2位に「マツダ」、3位「ホンダ」、4位に「ミツビシ」、そして5位が「イスズ」と日本勢が強かった。

 実際、モーターショーは華やかでちょっとした祭り気分も味わえる。しかも、車もお得に購入できるとあれば、確かにここで買おうという気持ちになることもわかる。ちなみに、規模の大きなモーターショーのうちこの先開催されるのは36回目になる「タイランド・インターナショナル・モーター・エキスポ2019」で、2019年11月29日〜12月10日、バンコク北郊にあるコンベンションセンター「インパクト・ムアントンターニー」が会場になる。タイは外国人でも、労働許可証があればローンを組めるので、我々日本人も土地の購入などよりは気軽に手が出せる。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)>

たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)

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