タイで摘発された「振り込め詐欺グループ」アジトの、「そりゃバレる」理由

タイで摘発された「振り込め詐欺グループ」アジトの、「そりゃバレる」理由

パタヤでは振り込め詐欺の事件以外にも、暴行事件や盗難など様々な事件が起きているので注意したい

◆変化するタイの日本人

 タイには昔から「変人」と呼ばれるような日本人がいた。だいたいそういった人物は見た目も言動もすべてが常軌を逸しているので、遠目に見るだけで普通ではないとわかったものだ。わかりやすいので、ある意味ではつき合いやすいとも言えた。

 しかし、今は普通に見えても内面に悪意を隠している日本人が増えた。見た目では判断できず、また狡猾になっているため、本性をなかなか現さないものだから、周囲の日本人社会の評価を聞いてその人物を判断しなければならないことも多い。

 その中で暴力団関係者は特に増えたような気がする。これまでもバンコクに暴力団関係の日本人は少なくなかった。ただ、以前はフィリピンの方が圧倒的に多いイメージで、タイはそれほど多くはなかっただろう。しかし、近年は直接の構成員だけでなく、いわゆるフロント企業(企業舎弟)などもタイに進出しており、日本人の善し悪しを外見で判断できなくなっている。

◆パタヤの「振り込め詐欺」拠点摘発

 こういったこともあり、日本人の犯罪が増えている中、先日3月30日にはタイ東部のリゾート地パタヤで振り込め詐欺のアジトが摘発された。若い人が使いぱしりでやらされているというイメージを持っていたが、50代の逮捕者もあり、年齢層に幅があった。

 彼らは当初、パタヤでスカウトされたと供述したようだが、おそらくそれもマニュアル通りだったと見られる。これを受けてか、在タイ日本大使館は4月26日に、大使館に登録する在留日本人に「【広域情報】特殊詐欺事件に関する注意喚起(加害者にならないために)」という一斉メールで注意喚起を送っている。おそらく他国の大使館も送っていると見られる内容で、要するに「海外で短期間で高収入」につられて渡航すると「かけ子」にさせられるぞという注意である。

 このタイの事件で逮捕された「かけ子」たちもリゾートに拠点を構えながらも自由に外出できたわけでもなさそうで、奴隷さながらに働かされていたようだ。甘い言葉に乗ってきた罰が当たったというわけか。

 ここ数年で振り込め詐欺の拠点が海外になっているという噂は増えてきていた。日本の警察の摘発を逃れるためにわざわざ犯人らが拠点として選んだそんなパタヤとはいったいどんな街なのだろうか。

◆アジトがあったパタヤの街とは?

 パタヤはタイ東部のチョンブリ県に位置するリゾート地であり、特別市だ。タイにおいては首都バンコクとここパタヤだけが特別市(バンコクは首都府)となっている。パタヤは厳密にはチョンブリ県内のバーンラムン郡の一部を指す。このパタヤと呼ばれるエリアだけに観光客が多いため、従来の行政方式では対応しきれなくなり、1976年に特別市となった。

 この街はバンコクから東におよそ160キロほどで、車なら2時間もかからずに到着できる。特に欧米人に人気のある歓楽街を抱え、タイの玄関口であるスワナプーム国際空港からもタクシーや長距離バスなどで直行する観光客も多い。

 元々はベトナム戦争時に、米軍兵士が休暇の際に訪れるビーチとして栄え、戦後は欧米人の一般客に注目されるようになった。そのため、今も日本人よりは欧米人に人気がある観光地だ。歓楽街はパタヤ・ビーチに沿って走るビーチ・ロードに集中し、その通りに並行して走るセカンド・ロード、サード・ロードにも今はバーなどが雨後の筍のようにできている。

 歓楽街の様式も主に欧米人向けで、カウンターと席だけの簡易的なバー、ポールダンスをする水着女性がいるゴーゴーバーが中心になる。これらは売春と直結した飲食店であるので、日中も街中にはきわどい服装をした男女が目につく。バンコクから最も近いビーチ・リゾートでありながら、近年はバンコク在住の日本人家族が足を運びづらくなりつつあるほど、歓楽街は拡大していると言っていい。

◆歓楽街エリア以外は外国人の姿はまばらな田舎町

 パタヤと外国人が呼ぶときにはそんな歓楽街だけを指していることがある。しかし、パタヤ特別市があるバンラムン郡だけを見ても、実際にはパタヤと呼ばれるエリアは10分の1以下しかなく、居住者は郡全体ではタイ人の方が圧倒的に多いのは当然のことだ。外国人の大半はあくまでも観光客であるし、長期滞在者も観光ビザでいることが多いので、タイの法的に認められる在住者となると案外少ない。

 特に日本人にもパタヤは人気とはいえ、「パタヤ=歓楽街」のために実際にパタヤに足を運ぶ観光客は、たとえば遺跡で有名なアユタヤと比べて少ない。パタヤ在住者となればなおさらだ。パタヤに暮らす日本人の多くが飲食店か旅行代理店をやっているようだが、それも数えるほどしかいないので、現地に住む日本人はみな顔見知りというほどである。

 人気の歓楽街を抱えるものの、所詮はタイの地方都市のひとつに過ぎないのだ。歓楽街がある中心地から外れれば外国人の姿はあまり見かけなくなる。バンコクでさえ、郊外で暮らせば同じようなもので、近所の人からは「なぜここに外国人が?」という疑問から、ちょっとした有名人になることは多々ある。

◆振り込め詐欺グループのアジトがあった地域

 今回の犯人たちはバンラムン郡内とはいえ、パタヤ・ビーチから直線で5キロも内陸の辺りに潜伏して詐欺を働いていた。しかし、潜伏どころか、ステージの上でスポットライトを浴びて活動していたと言っても過言ではなかった。おそらく、バンコクは日本人が多い上に家賃と物価も高いから、それから奴隷として働かせている連中を逃がさないため、といった理由でこのように辺鄙な場所を選んだのだろう。

 しかし、逆になぜこんなところにという場所に15人もの日本人が集まって、外出もせずにコソコソとなにかをしていれば、そんなもの、誰だって通報するに決まっている。昔からタイ人のホテルやアパートなどの物件のオーナーは外国人が入居した際にはイミグレーションに受け入れの報告をする義務がある。近年、この報告義務が厳しくなり、よりオーナーは外国人入居者を注視するようになっている。

 木を隠すなら森の中というが、この件に関しては真逆だったことで発覚して逮捕となったのだろう。タイ在住日本人は、実はこれは氷山の一角で、まだ複数の振り込め詐欺集団がタイ国内にいると噂している。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)>

たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)

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