伊勢丹も入居するタイの商業ビルで火災。タイで火事に遭遇したらどうする?

伊勢丹も入居するタイの商業ビルで火災。タイで火事に遭遇したらどうする?

「セントラル・ワールド」。4/10の火災は写真左の方の裏側で起こった

 4月10日午後5時半ごろ、バンコクにある日系デパート「伊勢丹」が入居する超大型複合施設「セントラル・ワールド」の8階で火災が発生した。オフィスビルやホテルも併設されるが、事務所の書類倉庫からの火災で、幸か不幸か2人の死者、16人の負傷者で事態は収束している。

◆古い建物は逃げ場がないことも多いタイ

 タイは日本よりも事件事故が多く、火災の発生も頻繁にある。建物が古いと逃げ道がなく、大惨事も免れない。

 2009年に切り替わるカウントダウンと共に、バンコク都内にあったぎゅうぎゅう詰めのパブでは店内で花火を打ち上げ大火災となり、67人の死者を出す大惨事が起きたことがある。ナイト・エンターテインメント施設としての認可がなく、民家として許諾された建物だったため、収容人数に比べて逃走経路が確保されていなかったことが事態が大きくなった要因のひとつだ。

 また、冒頭に書いた「セントラル・ワールド」の火災現場から目と鼻の先にある38階建ての高層ビルも1997年に火災が発生し、ヘリコプターが出動する騒動になった。エアコンが出火原因で、当時ビル管理の法令が緩かったこともあり、7階で発生した火が一気に燃え広がった。ビルにいた100人近く人が上に逃げるしかなくなったものの、死者は脱出を試みて飛び降りた3人だけだった。この事件により、タイのビル管理法が改正されている。ちなみに、4月のセントラルワールドでの火災も、死者のうち少なくともひとりは脱出しようと飛び降りた人物だと見られている。というのも、周囲のビジネスビルや病院、歩行中の目撃者らによって、事務所倉庫の小さな窓から落下する様子がスマホで撮影されていたのだ。

 前述したように、97年の火災を機に、ビルの管理法は改正されたものの、依然としてビル火災の危険性はタイは高い。特にバンコクは建物が日本よりも巨大なものが多い。高層であったり、広大であったりする中、万が一ビル火災に遭ってしまった場合、タイにおいて我々日本人はどうすればいいのだろうか。

◆タイのレスキューが教える「タイで火災にあったときの10か条」

 4月10日の「セントラル・ワールド」における火災の当日夜に、タイの救急救命活動の中心を担う慈善団体「華僑報徳善堂」が、タイでビル火災に遭った場合の対処法10箇条を発表している。それは以下のようなものだ。

1.消火設備などを確認しておく

2.非常口など退避経路を調べておく

3.あらかじめ室内の確認と避難訓練をしておく

4.非常ベルの場所などを見ておく

5.非常ベルや火事の兆候を感じたらすぐ階下に逃げる

6.逃げる際は部屋のドアを閉める

7.ドアを開けてい逃げる場合、ドアが熱くないか確認

8.熱を持ったドアは絶対に開けない

9.煙に巻かれないように低い姿勢で逃げる

10.逃げる際にエレベーターは使わない

 ぱっと見ると当たり前のことばかりではあるが、案外、火災に巻き込まれたときにパニックになればこの通りには行動できないものだ。3番目の避難訓練は商業施設の訪問やホテル宿泊する観光客にはできないとしても、1番2番4番の項目のようにあらかじめ目で確認できる部分だけでもしておいた方がいいだろう。

 タイの場合、地震がない国であることと、日本の消防法にあたるものなどが日本とは違う。古いビルなら火災によって有毒ガスが発生したり、熱によってビルが倒壊する可能性もある。タイ人はそのことがわかっているので、多くがパニックになり、出口や非常口に我先にと殺到する。将棋倒しになると、出口そのものが塞がれてしまい、たとえ倒れた人に巻き込まれなくても致死率が急上昇するのだ。

◆タイで火災に遭遇したら逃げることを最優先

 バンコクは各所に消防署があるものの、日中はどれほど機能するか不明だ。というのは、バンコクは世界有数の交通渋滞地域であるため、火災発生から消防隊の到着までに時間がかかる。緊急車両を優先してあげる習慣はこの2、3年で定着しつつあるが、バンコクは車線の幅が細く、渋滞中は避けてあげることすら難しい。ということは、我々が火災に遭遇した際にまずするべきことは「避難」しかない。

 一応、建物には必ず消火設備はある。それを使って消火活動もできなくはないが、たとえ日本の消防士でもそれは避けたい。半分パニックになっているタイ人と共に、言語を共有していない我々が参加すると足並みが揃わず、より危険が増す。

 また、なによりタイは負傷や死亡に対する補償もかなり低い。日本円で100万円も出れば十分かもしれないほどである。それであれば、逃げることが最優先だ。

 逃げる場合、商業施設なら非常階段などを目指す。最近できたばかりの商業施設はおしゃれに見せるためか、エスカレーターなどが入り組んでいて避難経路が長くなってしまう。施設によるが、バンコクだと階数によっては立体駐車場がビルに横付けされているので、ときには駐車場に出てから逃げた方が早い場合もある。

◆吹き抜けが多い商業施設は火元から遠くても要注意

 また、商業施設は吹き抜けが多く、煙が通りやすい。火元から遠いとしても煙に巻き込まれないよう注意したい。血中のヘモグロビンは酸素よりも煙(一酸化炭素)と結びつきやすい。知らぬ間に酸欠になって死んでいることもあるので、ビニル袋などどんなものでもいいので口に当て、低い姿勢で煙を避けなければならない。ちなみに、以前は濡れたハンカチを当てるとされたが、日本の消防庁消防研究センターによれば、濡れたハンカチは除煙効果が低減するという。また乾いたハンカチも一酸化炭素ガスの対策にはならないそうだ。あくまでも緊急措置に使うべきだという。

 もしホテルなら非常階段のドアを開ける前に注意しておきたいことがある。まず、ドアが熱を持っていないかだ。熱いときに開けると急激に酸素が流入し、爆発を起こすことがある。また、悪質なホテルの場合、そもそも非常口に鍵がかかっていることもある。これも事前に確認しておきたい。いずれにしても、タイの非常口は開けると警報が鳴る仕組みになっているので、火災時に鳴っても怯まないようにしたいところだ。

 タイはビルだけでなく、住宅が密集しているエリアも多い。特に観光地の昔の町並みなどは家が木造あるいは古く、かつ密集しているので燃え広がりやすい。タイを観光する際は、どこであっても事前に避難経路や対策を検討しておくべきである。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)>

たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)

関連記事(外部サイト)