失速したベネズエラのクーデター。コロンビアに脱出したグアイドー派兵士の士気に陰り

失速したベネズエラのクーデター。コロンビアに脱出したグアイドー派兵士の士気に陰り

フアン・グアイドー暫定大統領(グアイドー氏のTwitter @jguaido より)

 5月初旬までにコロンビアに入国したベネズエラの軍人と家族はおよそ1480人。彼らの多くはベネズエラと国境を接するコロンビアの都市ククタ市のホテルに分散して生活しているという。(参照:「El Nuevo Herald」)

◆コロンビアに脱出したグアイドー派軍人の困惑

 彼らは2月のグアイドー暫定大統領によって提唱されたコロンビアからベネズエラに救援物資を搬入するということと、それに協力の意思を表明したベネズエラの軍人であった。そして、マドゥロ政権から離脱して反政府派に合流するようにという同暫定大統領の要請に応えた軍人であった。現在、彼らは亡命者という待遇で宿泊と三度の食事は無料だ。しかし、公式に働くことが許可されていない。しかも、軍人としての務めもない。彼らが望んでいた凱旋してベネズエラに帰国できる可能性も日に日に遠ざかっている。

 彼らのホテルでの宿泊費用は国連とグアイドー暫定政権が負担している。が、ホテルへの支払いは滞りがちである。この3か月の間に4度ホテルから追い出されそうになったという。(参照:「El Nuevo Herald」)

 彼らは働くことが許可されていないことから、海軍のホセ・バルガス軍曹(28)のように3歳の子供がサンダルをホテルで無くしたので新しく2ドルのサンダルを購入しようとしてもそのお金がないという状態だ。彼には3人の子供がいるが、ククタの学校に入学させる許可も下りないため、ホテルの玄関ホールで駆けずり回っているという状況で、子供の教育に遅れが発生し閉塞された生活で心理的にも良くないとして彼は懸念している。

◆ベネズエラに残した子どもを思って涙ぐむ若き兵士

 ベネズエラの警官だった19歳の若い兵士は、食事に就く度にベネズエラに残した彼の子供が食事に有り付いているのか不安で自責の念に駆られるという。「時々トイレに入って涙ぐむこともある。なぜなら挫折感を覚えるからだ」と告白した。しかし、「これからも前に進んで行くだけだ」と述べた。

 ラファエル・ヒメネス軍曹の場合も、グアイドーの呼びかけに応じてコロンビアに入国したそうだ。

「それを実行する価値があると思ったからだ。そして、数日後には脱出した軍人で編成された軍隊で憲法とファン・グアイドーが真の大統領であることを擁護すべく帰国するようになると想像していた」と語った。(参照:「El Nuevo Herald」)

◆グアイドーやコロンビアのドゥケ政権に対する失望の声

 コロンビアで、これ以上自分たちの立場に発展する可能性はないとみたイスマリーの場合は、ペルーを経由してチリまで4日かけて移動したという。ベネズエラの軍隊から抜け出すことは裏切り者と見なされるのを承知しての実行だった。それもグアイドーが暫定大統領として自称したことを観て希望の光が降り注いだと感じたからだという。

 チリから家族にお金を送って先ず父親を呼びよせた。彼の妻はコロンビア人ということで子供を連れてのコロンビアへの入国は容易だった。父親はコロンビアに滞在中はチリ大使館やその他の公的機関を訪問して援助を懇願したが今のところは成果はないそうだ。彼は家族全員をチリに呼び寄せることにしているそうだ。「グアイドーには失望している。今の私の家族は成り行きに任せているだけだ」と述べた。(参照:「La Tercera」)

 ベネズエラの軍人がチリに向かう理由には彼らの親戚がチリにいるという理由とは別に、チリのピニェラ大統領がグアイドー暫定大統領の強力な支持者であり、ベネズエラの軍人を受け入れる用意があることを表明したからだという。

 一方、コロンビアのドゥケ大統領に対しては、ベネズエラの軍人は失望感を抱いているという。というのも、コロンビア政府からククタに脱出して来たベネズエラの軍人の為の具体的プランがないからだ。

 コロンビアはベネズエラと国境を接している関係から脱出したベネズエラの軍人を積極的に支援するようになると、まだマドゥロ大統領が政権を維持しているベネズエラとデリケートな関係になりかねないことをコロンビア政府は懸念しているのである。(参照:「La Tercera」)

 しかし、コロンビア政府のこの判断についても昨年8月に任期満了で大統領の職務を終えたサントス前大統領であれば、また別の対応をしていた可能性は十分にある。サントスは外交手腕は非常に巧みであった。ドゥケは大統領になる前は金融業界に籍を置いていた人物で政界への進出は初めての経験である。

◆乱れ始めた脱出軍人の規律

 コロンビアに脱出したベネズエラの軍人は3か月も何もできないという状態から軍人としての規律が乱れるものもいるという。泥酔して宿泊しているホテルで乱暴行為に走った例もあるという。また、4月20日にはテロに襲われたと偽った通報もあった。この場合はそれに関与したベネズエラの軍人は避難民としての特権を失うことになる。またネットを通して覆面姿でグアイドー暫定大統領に経済的援助を要求するという事態も起きた。(参照:「Infobae」)

 現状では、マドゥロ大統領を追放してグアイドー暫定大統領が政権を掌握するようになる可能性は全く立っていない。コロンビアに逃亡したベネズエラの軍人にとって希望をこれからも抱き続けるのは容易ではない。 

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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