北朝鮮、6月3日からマスゲーム開始。中国人訪朝者急増で外国人訪朝者にさまざまな余波

北朝鮮、6月3日からマスゲーム開始。中国人訪朝者急増で外国人訪朝者にさまざまな余波

マスゲームでは中国人向けの演出も。「共産党がなければ今の中国はない」と書いてある

◆史上初だらけな今年の「マスゲーム」

 昨年、建国70周年記念で特別に復活させたはずのマスゲームが今年も毎年の定例行事のように開催される。2019年は6月3日から公演すると正式に旅行代理店へ通達された。終了は、昨年と同じく10月上旬を予定しており、史上初の6月開催であり、これまた史上初の4か月を超えるロングラン公演となる。しかも、10月中旬まで延長される可能性も代理店へ示唆している。

 これまでになかった点はそれだけではない。今年はマスゲーム開催期間中に平壌へ滞在したらマスゲーム観覧がスケジュールに強制的に組み込まれる。つまり、マスゲームを観覧しないという選択肢がないわけだ。2002年に始まり1年の休演を含め2013年までと復活した昨年も観覧を希望しないという選択はできた(現実的には日本人や中国人を除く全外国人はほぼ全員観覧してきたが)。

 週何日公演するのかやマスゲームのテーマなどはまだ発表されていないが、観覧料は発表されており、昨年と同じとなる。

 VIP席800ユーロ(約9万7700円)、1等席500ユーロ(約6万1000円)、2等席300ユーロ(約3万6600円)、3等席100ユーロ(約1万2200円)の4種類だ。

◆「外貨獲得」のために中国人観光客がターゲットか

「枯渇しつつある外貨の獲得に必死なのが伝わってきます。強制観覧をわざわざ盛り込んできたのは中国人により多くの人民元を使わせるためでしょう」(中国朝鮮族の貿易会社代表)

 北朝鮮を訪れる全外国人の9割以上を占める中国人は日本人や他の外国人と比べると半分から3分1ほどの安い旅費で訪朝している。しかし、マスゲーム観覧料には優遇はなく他の外国人と同額になるためより多くの外貨を獲得したいのだろう。中国人は旅費と比べて高額なマスゲーム観覧を希望しない旅行者も少なくなく今年は「強制観覧」にしたのだと推測される。

◆中国人観光客激増で起きる様々な変化

 5月末、北朝鮮旅行についてある変化があった。北朝鮮東北の羅先特別市と中国と結ぶ琿春イミグレーションが6月1日から夏季期間、土曜日も閉鎖されることになった。

 琿春のイミグレは、毎週日曜日に完全閉鎖されすべての人の出入国ができないが、それに加えて土曜日も、中国人を除く全外国人の出入国が停止されるとのこと。

 どうやら中国側の決定らしく5月末に一方的に北朝鮮側へ伝えられて北側も対応に追われている。土曜日に外国人を締め出した理由は定かではないが、中国人の土曜日の羅先日帰りツアーが激増しているための対応とみられる。

 中国人訪朝者の激増によって他の外国人へのしわ寄せは他にもある。

◆丹東発国際列車の切符が「プライムチケット」化

 5月1日から丹東発の国際列車の3段ベッド席(硬?)の独占購入権を丹東の旅行会社1社が獲得してしまったため切符が買い占められてしまったのだ。少なくても数か月先まで買い占められてしまっており、海外の旅行会社が切符を入手することが難しくなってしまった。

 影響はそれだけではない。丹東から国際列車で帰国しようという北朝鮮人ですらも切符が手に入りづらくなり頭を抱えているというのだ。

 仮にも国際列車である切符を1社が独占購入するなど……、は中国ではあることで、以前、「大同江ビール」の総輸入代理店を、いまだ軟禁が解かれたとの情報がない美人女性実業家の馬暁紅氏の「丹東鴻祥実業発展有限公司」が独占権を持っていたことは以前もお伝えした。

 競争を廃して独占権を与えることは中朝や中ロ間ではよく行われることのようだ。

 独占した国際列車の切符は、傘下の旅行会社へ配布されているため外国人が買うとしたらそれらの旅行会社から買うしかなくなり、プレミアがついて高騰。またコネも必要となってくる。

 結果、それらの分がエンドユーザである一般旅行者の旅費へ加算され旅費自体が大きく上がることになった。通常、利用客が増えたら車両を増やしたり、増便するところであるが国連制裁の影響で難しいらしく、この夏の平壌への国際列車、旅客機ともに予約しづらい状況となっている。

◆2段ベッド席はまだ購入可能

 出発地丹東の旅行会社に独占購入されてしまった国際列車であるが、丹東の旅行会社へ取材すると切符を購入する方法はないわけではない。

「硬?は出発地である地元旅行社が独占購入権を獲得できますが、個室の軟?(2段ベッド席)は、丹東駅が販売・管理をしています。独占権は与えられないので買うことができますよ」(丹東の旅行会社)

 中国の鉄道駅は、その地域の鉄道局が管理しており、鉄道局は北京に本社がある国営企業なので、丹東市政府(役所)や国家旅遊局(観光庁相当)とコネがあれば、グリーン席相当の個室の切符は買うことができるのかもしれない。

 さらに話を聞くと、平壌発の帰路は、北朝鮮側に切符販売権があるので、日本人でも3段ベッド席へ毎日乗れるとのこと。

 もっとも中国のことなので、今は独占されて買えない切符もいつの間にかなし崩し的に買えるようになる可能性は高いと思われる。しかし、それでも外国人訪朝者が中国人旅行者激増によって思わぬ余波を受ける日はしばらく続きそうだ。

<取材・文/中野鷹(TwitterID=@you_nakano2017)>

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