収監中の麻薬王による3つの要望が「脱獄の恐れあり」と却下された理由とは?

収監中の麻薬王による3つの要望が「脱獄の恐れあり」と却下された理由とは?

2017年にロングアイランドのマッカーサー空港に到着したときのエル・チャポ  Photo via DEA(Public Domain)

◆収監中の麻薬王が出した3つの要望

 「エル・チャポ」こと麻薬王と異名をとるホアキン・グスマンは現在もニューヨークの連邦刑務所に収監されて今月25日の判決を待っている。

 この数日話題になっているのはエル・チャポが弁護士を介して担当判事ブライアン・コーガンに3つの要望を出したということだ。その3つとは、

@1週間に2時間中庭に出て息抜きができること

A耳栓

B1週間に6本の水

 である。その要望を受けた連邦刑務所の職員は「これは彼が脱出する為のプランの一部だ」と見て警戒を強めているということなのである。(参照:「Clarin」、「Infobae」、「Pagina12」)

◆3度脱獄を成功させてきたエル・チャポ

 実は、彼はこれまで3度メキシコの刑務所から脱出している。

 最初は1991年6月に10万ドル(1100万円)で警察部長を買収して脱出。2001年1月には刑務所の監視員を買収して洗濯物が入ったカートに身を隠して脱出。2015年7月は彼の独房のシャワーの受け皿の下から仲間の手助けを受けて1.5キロの地下トンネルを掘って脱出。

 2016年1月に再び逮捕されて3回目に脱出した同じ刑務所に収監されていたが、当時メキシコの大統領だったペーニャ・ニエトは米国の圧力に屈して彼の身柄を米国に送還。その時、米国では死刑の判決はしないという条件付きだったという。そして、ニューヨークで公判が開かれている間はそこの連邦刑務所に拘留するということになったのである。

◆過去にあったテラスからの脱出劇

 この連邦刑務所では彼の独房は24時間照明が点灯されており、警備員の厳しい監視のもとにあることからこれまでのような脱出手段を再現することはほぼ不可能である。

 唯一可能性としてあるのは刑務所の建物の屋上にある天井が鉄格子で覆われたテラスだと想像されている。

 このテラスを利用してそこで休息していた囚人がヘリコプターを利用して脱出しようと試みた事件が1981年に前例としてあるという。

 このときは、囚人の仲間が盗んだヘリコプターで接近して天井の鉄格子を切断しようとしたが、それが不可能だと見るやヘリコプターを電線と接触させて爆破。その前に銃をテラスに投げ込んで囚人二人と100人から成る警備員と警察との間で銃撃戦があった。結局、その時脱出は果たせなかった。

 こうした前例があることから、刑務所の警備員はエル・チャポに対しては独房から出て空間のある場所で息抜きの時間を与えるというのは危険だと見ているのである。刑務所の方からは息抜きには室内自転車やペダルローラーを利用できるアクセスを彼はもっていると弁護側に回答したという。

 また、中庭で休息している間は太陽の光線も直接浴びれるからだというのもテラスでの休息を要望した理由だった。それに対して、刑務所からは彼の独房には間接的に太陽光線が入るようになっているというのが回答だったそうだ。

◆耳栓を却下した理由は?

 また耳栓を要望したのは彼の独房のエアコンの音がうるさく寝ることが出来ないというのが理由だとした。これまでトイレットペーパーを耳栓に利用しているそうだ。

 それに対して、刑務所の方では耳栓をしているので警備員の指示を聞くことが出来なかったというのを口実にして警備員の指示に忠実でなくなる可能性があるとしてその要望は却下された。

 唯一、受理されたのは1週間に6本の水の提供であった。彼の独房の水は飲むと喉が痛むというのが別に飲料水を所望した理由だという。

 また、かれが刑務所内にある売店で物を買うということにも許可を与えていない。そこで購入したものはどれでも武器に変身させて警備員や強いては彼の弁護士にまで危害を加える可能性があると検察は判断しているからである。また、そこで他の囚人と接触することも危険だと見ている。

 判決が下されたあとはより厳重な刑務所に移送されることになっている。

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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