北朝鮮の大同江ビールがバンコク北レスに登場。その流通経路はグレー!?

北朝鮮の大同江ビールがバンコク北レスに登場。その流通経路はグレー!?

アセアン北レスでは2号ビール(主に海外輸出用の製品)以外の種類も混在して提供されている大同江ビール

◆バンコクの北レスに「大同江ビール」が登場!?

 7月11日、北朝鮮の大同江ビールを中国から輸入販売したとして19歳の少年が書類送検された。理由は、日本は北朝鮮への経済制裁で北朝鮮を原産地とするあらゆる貨物の輸入を禁止しているからだ。(参照:北朝鮮ビール不正輸入容疑で少年書類送検 高値で転売|朝日新聞)

 世界的にうまいと評価される大同江ビールを日本で味わうことは、まだまだハードルが高そうだが、そんな大同江ビールがなんと7月中にもタイのバンコクの北朝鮮レストラン(以下、北レス)に登場するとことを北レススタッフから教えてもらった。

 

 在留邦人10万人を超え、多くの日本人が訪れるバンコクにある北レスで、大同江ビールを北朝鮮へ行かずして楽しむことができるのだ。

 本サイトでも紹介したAKB48の日本語曲などを披露する北レス「ヘマジ館」へ6月末に訪れたときのことだ。

 著者がバンコク北レスの絶対エースと勝手に呼ぶ李同務(トンム)が、

「7月から大同江ビールが登場しますよ」

と衝撃の一言を口にしたのだ。

 著者的に世界一の北レスと自認するヘマジ館であるが、最近ステージショーの開催率が悪く、やや残念に思っていたところへの予期せぬ朗報となった。

◆東南アジアでは意外と提供されていた

 タイへ大同江ビールが上陸するのは初と思われる。しかし、実は、すでにラオスやカンボジアなど周辺国の北レスでは大同江ビールがこっそりと提供されておりSNSにも投稿されている。

 ちょうど同時期の6月末にハノイ(ベトナム)、プノンペン(カンボジア)、ヴィエンチャン(ラオス)で営業している北レス全店を調査する知人へ情報提供していたので、大同江ビールの有無と価格なども調べてもらった。

 結果、6月末の時点で、ハノイ2店舗、プノンペン4店舗 、ヴィエンチャン1店舗が営業していることが確認できた(北朝鮮人スタッフがいる店舗のみカウント)。現地店舗で、北レススタッフに他の店舗を聞き出す方法で他店の場所を探したそうだ。

 全店で大同江ビールの販売を確認。しかし、いずれもメニューには載っていない裏メニューのような扱いだった(メニューにはないがパンフレットでは紹介されていたりはする)。

 ハノイの1店では大同江ビール1本10ドル(約1080円)、プノンペンやヴィエンチャンの各店舗でも同等金額で提供されていた。

◆撮影はNGな大同江ビールの輸入元は……

 現在、タイも含めアセアンに残る各北レスでは店内撮影が厳しく、女性スタッフが配膳しながら目を光らせている。 

 女性スタッフやステージショーなどでなく注文した料理くらいだったら撮影しても指導されないのだが、ハノイの店では、大同江ビールを撮影しようとしたら猛烈に指導されたそうだ。

 著者は、その話をリアルタイムで報告を受けてピンと来た。そこで協力者へぜひ裏側のラベルを撮影してほしいとお願いした。

 プノンペン4店のうち夜の時間帯で満席のためスタッフが忙しく動き回っている店舗で指導の目をかい潜りチャンス到来でパチリと撮ってくれたという。

 すると、案の定、中国へ輸出されている大同江ビールだった。輸入元は、昨年、本サイトで紹介した「丹東中威工貿有限公司」。「淘宝網」でも売られているので中国全土で買うことができる。ハノイやヴィエンチャンの店舗でも同様のラベルだった。

 北レススタッフが大同江ビールの撮影を嫌がっていたのは、これらの大同江ビールが正規輸入ではなく、中国からハンドキャリーで持ち込んだグレーな製品だからだろう。

◆輸入経路は「グレー」!?

 たとえば、タイだとアルコールの免税範囲での持ち込みは、1人1リットルとなっているので、この大同江ビールだと2本しか持ち込めないことなる。しかし、これではすぐに在庫切れになるので、北レスで提供することを考えると心もとない。

 今年2月末、ハノイでの米朝首脳会談の取材で訪れていた在京テレビ局記者が北レスで大同江ビールを2人で10本ほど飲み干してしまい会計が120ドル(約1万3000円)を超え一部自腹を切ったという話を聞いた。

 注目すべきは、高額請求ではなく、大同江ビールを10本も飲めたことだ。それだけ在庫があるということを意味している。

 ベトナムのアルコール持ち込み制限はタイより多少緩く、ビールなら3リットル免税で持ち込めるので1人6本持ち込めることになる。

 本来、正規輸入品であれば、ラベルは朝鮮語と現地語や英語になるはずなので、今回、確認できた3か国の北レスで提供されている大同江ビールは、ハンドキャリーで中国から持参し、おそらく、旅具通関(個人通関)で持ち込まれたと推測される。

 旅具通関で通した貨物は、本来、私用目的が前提であり、店等で販売するのは違法となる。そのため現地通関とのコネや賄賂などを使って通してもらっているのだろうか。その分が上乗せされた金額が10ドル前後と思われる。この金額は、北レスで飲める他のローカルビールの3、4倍くらいの価格となる。

 バンコクへ登場する大同江ビールも同じくハンドキャリーで持ち込まれていると思われるが、いくらで提供するのか気になる。シンハービール中瓶90バーツ(約315円)、アサヒスーパドライ中瓶120バーツ(約420円)だったので、300バーツ(約1050円)以上の超高級ビールになりそうだ。

 バンコクのヘマジ館は、しばらくタイで唯一大同江ビールが飲める店となりそうだ(他のバンコクやパタヤの北レス2店へも近日登場するのかも?)。

<取材・文/中野鷹>

【中野鷹】

なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID@you_nakano2017

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