あのオバマも食べた!「フォー」じゃないベトナムの麺料理って知ってる?

あのオバマも食べた!「フォー」じゃないベトナムの麺料理って知ってる?

一般的なブン・チャーのセット一式。ビールにも合う

◆日本でお馴染みの「フォー」以外のベトナム麺、知ってますか?

 国内外でベトナム中部の観光が注目されている。

 港湾都市のダナンなら日本から直行便があり、また古都のホイアンやフエなど見所が多い。物価も安く、中部はここでしか食べられないベトナム料理というのも少なくないので魅力がある。

 とはいえ、ベトナムにおいては料理は北部だと言う人も多い。南部の都市ホーチミン在住の日本人は、「北部は12月から3月ごろは寒くなり、野菜など得られる食材が少なくなります。だから、長い歴史の中で創意工夫がされ、ベトナムの北部料理は南部料理に比べておいしいのだと思います」と言う。

 しかし、実際にベトナム料理と聞いてぱっと数種類でも思い浮かべることができる人も少ないのではないだろうか。

 タイ料理と混同している人もいるだろうその中で、おそらく最も有名なベトナム料理と言えば「フォー」だと見る。フォーは米粉から作られた麺である。

 今、日本はタイ料理ブームと言っても過言ではないほど国内にタイ料理店が増えている。そこに必ずあるのがタイの米粉麺「クイッティアオ」だ。この名前も「パクチー」に並んでかなり浸透していると見るが、20年以上前の日本のタイ料理店ではクイッティアオはベトナムから輸入したフォーで代用していた店が多い。当時の日本にはタイ食材の輸入代理店が少なかったからだ。それほどフォーは昔から日本にあったのである。

 ベトナム北部の中心地であり、首都でもあるハノイでフォーを食べると、さすが地元といった感じで、おいしい店がたくさんある。ハノイで45年続く名店「フォー・ティン」は日本人からも絶大なる支持を得ており、2019年3月には池袋にも支店が誕生している。

 ただ、日本ではフォーの知名度が圧倒的に高くはあるが、ベトナム料理には多数の麺料理が存在するのも事実だ。そのうち、ハノイ発祥とされる麺料理もまたおいしく、日本人の口にも合う。ハノイを訪れた際にはそういったこのハノイ発麺料理も堪能していただきたい。

 その麺料理とは「ブン・チャー」というものだ。

◆「ハノイ式つけ麺」的な麺料理がベトナムでも大人気に

 ブン・チャーは「ブン」という麺を使った料理で、いわば「ハノイ式つけ麺」といったところか。たっぷりの野菜と炭火焼きの豚肉などがセットになり、ボリュームも満点である。店によって価格帯は違うが、安いところでは200円レベル、高いところでも500〜600円程度だ。

 このブンというのは、フォーと同じように米粉が原材料ではあるが、製法がまったく違うという。米粉を水に溶き、微発酵させたのちにところてんを押し出すようにその溶液を湯に落として成型する。一見、日本の素麺のようだが、そのままの状態だとベタベタとくっついた状態になっている。

 この麺を、たっぷりの炭火焼きの豚肉や肉団子などが入った甘酸っぱいスープをかけて食べる。スープがかかると麺はさらさらに崩れ、食べやすくなる。お好みで載せる野菜や香草と共に頬張ると、なんとも言えない至福の瞬間が訪れるだろう。

◆オバマ元大統領も食べた「ブン・チャー」

 このブン・チャーをネット検索すると、予測ワードに「オバマ」と出てくる。これはバラク・オバマ元米国大統領が2016年5月にベトナムを公式訪問した際に立ち寄った店がブン・チャーの店だったからだ。ハノイ市内にある「フオン・リエン」という食堂で、店自体は1993年創業らしく、元はそれほど有名な店だったわけはないようだ。今でもこの店には「オバマ・コンボ」という、オバマ氏が食したブン・チャー、揚げ春巻き、ハノイ・ビールのセットがある。

 ただ、在ベトナムの知人によれば、ここは大しておいしいわけではなく、「むしろ向かいの麺食堂のブン・チャーの方がおいしい」のだとか。

 ベトナム語は声調記号がつくものの、基本的にはアルファベットが使われるので、雰囲気で書いてあることがわかる。ブン・チャーは「Bun Cha」と表記するので、ベトナム語ができなくても店を見つけることは容易だ。最近はハノイだけでなく中部や南部でも見られる人気料理なので、ベトナム国内で楽しむことができる。

 先のオバマ氏の店以外にも有名店は複数ある。ただ、ベトナムで注意が必要なのは、稀にニセモノの店があるということだ。ブン・チャーのニセモノではなく、有名店のニセモノである。

◆人気沸騰で「ブン・チャー」業界は仁義なき戦いに

 たとえば、ハノイの旧市街で有名な「ブン・チャー・ダッキム」は相場的にはやや高めの印象はあるものの、スープがふたつセットについてくるほどボリューム満点で、濃厚なスープにジューシーな豚肉と、さすが名店と言わしめるものがある。しかし、この店で気になるのは、店内に掲げられる「隣はニセモノです」といった糾弾の垂れ幕があることだ。

 どうもこの店の隣にあるブン・チャー店は後発店らしく、客を奪われてしまっているのか、本家はかなり怒っているようだ。店の外にその垂れ幕を張り出さない理由は不明だが、かなり険悪なようである。

 試しに後発店にも入ってみた。たまたま本家の真横の路面席に座ってしまったため、本家の店員がこちらをじっと睨んでくるなど、日本では味わえない緊迫感があった。味は決してまずくはないが、さすがに本家ほどのコクはないような気がした。

 後発店は本家の店名を名乗っているわけではない。ただし、店名には「ブン・チャー・ナンバーワン」といった名称がつけられていた。店名がわからない外国人が「この辺りで一番おいしいブン・チャーの店は?」と簡単な英語で地元民に訊くときに出てきそうな台詞に合わせた店名という点で、後発店の作戦勝ちといったところだろうか。

 とにかく、ベトナム麺料理は様々あり、ハノイならぜひともブン・チャーを試してもらいたいところだ。

<取材・文・写真/高田胤臣 写真/山中肇>

【高田胤臣】

(Twitter ID:@NatureNENEAM)

たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)

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