タイの寺院、「インスタ映え」を求め日本人観光客が殺到。マナー違反が問題に

バンコクにあるパクナム寺院にインスタ映えを求め日本人が殺到 マナー違反などが不評

記事まとめ

  • バンコクの西端の方にあるパクナム寺院が「インスタ映え」すると日本人が殺到している
  • 中にはマナー違反をする者もおり、タイ人から不評を買っているという
  • タイ在住日本人は、タイ国内での日本人観光客のマナー向上を訴える人が少なくないとか

タイの寺院、「インスタ映え」を求め日本人観光客が殺到。マナー違反が問題に

タイの寺院、「インスタ映え」を求め日本人観光客が殺到。マナー違反が問題に

天井はドーム状なので、声や音が変な響き方をする。インスタでは、逆立ちをしたりする写真を見かけた

◆バンコク郊外の寺院に日本人が殺到……

 相変わらず日本人からのタイ人気に陰りはなく、連休や学生の夏休みともなればさらにたくさんの日本人が訪タイする。タイ人の観光業に携わる人たちも日本の連休をしっかり把握していて、稼ぎ時とばかりに待ち構えている。

 近年は、誰もがウェブで情報を発信することが増えたので、タイの観光情報はおそらくどんな言語のサイトと比較しても、日本語の情報発信量がもっとも充実しているのではないだろうか。

 しかし、インスタなどのSNSで拡散された観光スポットが、異様なまでに日本人に埋め尽くされてしまい、異国情緒などが感じられないことなどがあるだろう。特に悪い例もときどき見られるようになってきた。たとえば、バンコクの西端の方にある「ワット・パクナム・パーシージャルン(パクナム寺院)」だ。

◆日本人大量殺到の理由は「インスタ映え」

 ワット・パクナムはアユタヤ王朝時代(15〜17世紀ごろ)に建立された寺院とされ、2012年ごろにできた仏塔が今日本人に大人気になっている。80メートルもある仏塔内部は5階建てになっており、最上階には美しい天井画があるため、「インスタ映え」するということで連日日本人が詰めかけている。

 地域的に在住日本人もあまり多くなく、またほかに観光スポットもないのだが、この寺院にだけ日本人が集まっていて、ちょっと不思議な雰囲気がある。タイ人以外の参拝客の大半が日本人であるため、中にはマナー違反をする者もおり、タイ人から不評を買っているのだ。

 ただ、タイ国内では日本人よりも圧倒的に訪タイ者が多い中国本土の人たちの方が報道でマナー違反が指摘されることが多い。そのため、日本人の不評はタイの報道ではあまり伝えられないので、ワット・パクナムの批判は果たして本当なのか。現地に足を運び、確かめてみた。

◆タイ人から不評を買うワットパクナムでの日本人の行動

 ワット・パクナムにおける日本人の不評とは、天井画のあるフロアで足を上げて(逆立ちのような状態)写真撮影をすることに対し、タイ人が無礼だと言っていることにある。

 すでに日本語サイトなどでもこの不評の話は掲載されているからか、筆者が来たときは足を上げたりする人はいなかった。タイでは足の裏は不浄とされるので、一般生活においても仏像や人に向けて足の裏を見せないようにする。そのため、あのポーズは特にタイ人に嫌がられるのだ。さすがにそういう人はもういないようだが、批判はまだ沈静化していないのも事実だ。

 タイは微笑みの国とも呼ばれ、タイ人は全般的に気質が温厚であり、南国的なおおらかさがあるとされる。これは事実でもあるのだが、怒りの沸点はわりと低く、いわゆるキレた状態になると手がつけられないことはよくある。また、保守的な一面もあり、古くからあるしきたりやマナーを重んじる人も多い。

 特に、国民の94%が仏教徒だとされるタイでは、寺院におけるマナー違反は許されることではない。女性などは肌の露出が多い服装は禁じられているなど、ドレスコードや行為などに細かなルールがある。看板などで明示していればいいが、ときに外国人にはわからないマナーもあり、日本人だけでなく、ほかの国の人も白い目で見られることはある。

 しかし、このワット・パクナムに限っては、今、外国人参拝客のほとんどが日本人であり、そのため、「日本人が」と限定してマナー違反を指摘される事態になっているのだ。

◆30分間だけでも30人の日本人観光客

 守衛のタイ人に訊くと「1日に1000人の日本人が来る」と言っていた。もちろんこれはかなり大袈裟な数字ではあるが、筆者が天井画のフロアにいた30分程度の間にも30人近くの日本人が出入りしたので、1日なら数百の日本人が訪れていると見る。

 実際に訪問してみるとその天井画は非常に美しいもので、見る価値は確かにある。ただ、比較的新しい建造物であり、かつ天井画は半球体状の天井に描かれているため、声が響く。日本語は一音一音をはっきり発音する言語だからというのもあるが、室内にどうしても声が響いてしまう。

 訪問時はどちらかというと女性よりも、日系企業の出張者が郊外の工場訪問の帰りに寄ったのか、50代くらいの男性たちの声の方が大きかった。筆者が2階の階段を上がっている段階で聞こえており、階段ですれ違ったタイ人家族は「あの人たちは寺院は静かにしなければならないことを知らない」といったことを話しているのが耳に入った。

◆日本人の評判下落、困る真面目な在タイ邦人

 ワット・パクナムのマナー違反記事はタイ在住者などが中心に発信したもののような気がする。

 先日はタイ東部のリゾート地パタヤで特殊詐欺の日本人犯罪集団が逮捕されたり、2016年3月には社員旅行でタイに来たと見られる日本人男性30人が、ホアヒンというリゾート地で全裸になって円陣を組み、タイ人に目撃されて批判された。

 こういった事件が起こると、在住者の中で特にタイ人との関係が強い人は「これだから日本人は」と一緒にされてしまうことがある。そのため、在住日本人はタイ国内での日本人観光客のマナー向上を訴える人が少なくないのだ。

◆少しは改善されたのか?

 2019年に入ってからのワット・パクナム紹介記事のほとんどでそのマナーについて触れているようなので、先にも述べたように、筆者が訪問した際はやや話し声が大きかった以外に特にひどいマナー違反はなかった。平日だったので、人が少なめだったというのもあるだろう。

 しかし、帰り際に、寺院内にいた警察官に話を聞いてみた。すると、思いのほか、強い言葉が返ってきてしまった。

「ネットで有名になったので日本人が増えた。それはありがたいことだが、足を上げる、寝転がる、ポーズをとって撮影する。こういうことはすべてマナー違反だ」

 警察官が言うには、足を上げないまでもピースをしたり、ヨガのような、なんらかしらのポーズも不敬だという。上記は意訳もありかなり短くしているが、実際には「日本人のマナー違反がニュースになっているが、本当か。今もか」という質問に対して、5分くらい捲し立てられた。後半はヒートアップしてしまい、筆者が殴られてしまうのではないかというくらい、語気も強めだった。筆者になだめられて落ち着きを取り戻した警官は続けた。

「日本人が来てくれるのはうれしいことだ。ここは寺院なので、日本人だけを拒むこともしない。とにかく、マナー違反はみつけたら都度注意していくしかない」

 外国人訪問者のほとんどが日本人であるため、批判されやすくなるのは仕方がないが、ワット・パクナムに関わるタイ人たちにはまだ続いている問題でもあるようだ。天井画の写真撮影は今のところ禁じられていないし、日本人だからと攻撃されることもない。実際に天井画は一見の価値がある。この夏、訪タイでワット・パクナムを訪れる場合、マナーを守って過ごせば問題はないだろう。

<取材・文・撮影/高田胤臣>

【高田胤臣】

(Twitter ID:@NatureNENEAM)

たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)

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