アジア諸国でも急成長する「都心型ドラッグストア」―「毎日が物産展」で成功する日本のローカル企業も!?

アジア諸国でも急成長する「都心型ドラッグストア」―「毎日が物産展」で成功する日本のローカル企業も!?

アジア各地に増えつつある日系ドラッグストア(台北市)。 しかし「成功例」はまだ少ない

 前回の記事では、大手ドラッグストアの「立地形態」に注目し、近年は「都心型中心」のチェーン店よりも「郊外型中心」のチェーン店のほうが成長力があること、とくに都心・駅チカエリアではドラッグストアが飽和状態にあり、そのことが大型経営統合検討の一因になったと考えられることを述べた。

 さて、それでは国内市場が飽和状態であるならば海外市場に進出するのはどうであろうか。

 とくに、近年日本のドラッグストアはアジア諸国を中心とした外国人観光客がお土産を購入する場所として人気を集めており、その知名度も上がりつつある。しかし、日系ドラッグストアの「海外進出」はまだまだ進んでいない。

◆アジアのドラッグストア業界を牽引する「ワトソンズ」

 現在日本国内でも見られるような、薬のみならず化粧品や食品を多く扱ういわゆる「スーパードラッグ」業態のドラッグストアは世界各地で見られ、とくにアジア諸国では急成長を続けている。その急先鋒となっている企業が、アジア最大手のドラッグストア「ワトソンズ」(香港)だ。

 同社は中国や東南アジア、ヨーロッパに亘る広い地域に展開しており、グループ年商は約200億ドルほど(2017年)。企業規模はドラッグストア世界最大手の「ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス」(米・英・瑞の大手ドラッグ3社の統合会社、年商約1000億ドル)には及ばないものの、世界各国のナショナルチェーンを買収することで、2011年に約1000店舗だった店舗網を2019年には25ヶ国、約15000店(傘下企業含む)を超える規模へと躍進させた。そのうち、中国の店舗は約3600店(2019年)を占め、アジア各地の新興国への展開が同社の成長の要となっている。

 ワトソンズの成長を支えているのが、豊富なプライベートブランド(PB)商品の存在だ。

 同社の店内に入ると、健康食品・化粧品・家庭用品などあらゆる分野のPBが展開されており、ざっと見たところ全商品のうち約2割ほどをも占める。こうしたPB商品はナショナルブランドと比較すると格安で販売されているものが多く、まさに同社の経営規模あってこその値段であるといえよう。なかには日本で発行されている香港や台湾のガイドブックにも「現地チェーン店で買えるオススメのおみやげ」として掲載されているものもあるほどだ。一方で、日本製造の商品(薬や化粧品)は比較的価格が高いものが多く、国にもよるであろうが日本国内の実勢価格の2倍ほどするものさえある。

 ワトソンズを運営する和記黄埔(ハチソン・ワンポア)グループはスーパーマーケットや酒店などの運営もしているものの、ワトソンズ業態では(筆者が見た限りでは)旗艦店級の大型店舗を除けば食品の取り扱いが多い訳でもなく、スーパーなどとも棲み分けされているという印象を持つ。その点では、ひらたくいえば、日本の駅チカなどにある都心型ドラッグストアの品揃えと大きく変わらないといえる。

◆海外戦略でも「イオンが有利」か

 ワトソンズをはじめとして、アジア諸国で成長中の大手ドラッグストアは駐車場を持たない路面店が中心であり、また化粧品の品揃えが充実しているなど、日本の都心型ドラッグストアが得意としてきた業態だ。

 しかし、日本の大手ドラッグストア各社による海外展開は遅れを取っていると言わざるを得ない。国内の大手ドラッグストアは、住友系の「トモズ」が現地企業との合弁で台湾に50店ほど、「マツキヨ」がタイに現地企業との合弁で約20店・台湾に3店を(ベトナムにも進出検討中)、「ツルハ」がイオンの海外ネットワークを生かすかたちでタイに20店ほどを展開しているが、それ以外の企業は海外展開しているところでもまだまだ数店単位。一旦海外進出したものの店舗数を伸ばせなかった例も少なくなく、業界の雄・ウエルシアでさえ、2011年から展開していた中国の店舗を2019年に全店閉鎖、現在はシンガポールに数店を展開するのみとなっているほか、ココカラファインも過去に中国の店舗を全店閉鎖。2012年に再進出したものの店舗網の大幅拡大には至っておらず、数店舗を展開するのみとなっている。

 これらの日系ドラッグストアの海外店舗は殆どが「都心型」。「郊外型」にも積極的に挑戦している企業はツルハだけだ。

 一方で、国内流通の雄・イオングループは、海外における「ドラッグストア単独店」は多くないものの、アジア諸国では郊外を中心に展開するスーパーマーケット「イオン」「マックスバリュ」などの一部店舗にドラッグストアに類するコーナーや健康食品コーナーを設けて人気を集めており、ノウハウの蓄積は十分であるといえる。

 ドラッグストアは「薬」「化粧品」「食品」という取り扱い品目ゆえに、現地人の好みを知り尽くすことが成功への近道となる。ドラッグストアとして地域に根付いた展開をおこなうとなれば、現地人の好みを知り尽くし、都心型・郊外型双方のノウハウがあるイオングループ傘下のドラッグストアが有利になるのではないだろうか。

 先述したとおり、アジア諸国の大手ドラッグストアも多くが都心型であるため、未開拓である「郊外型」には眠れる大市場があるともいえる。現在ツルハは「世界2万店」の目標を掲げているが、その実現のカギとなるのが「郊外型」店舗の積極展開であるといえる。

◆毎日が北海道物産展!?――「日常のドラッグストア」ではなく「非日常」をウリにした成功例も

 そうしたなか、少し異なった戦略で海外展開をおこなっている日系ドラッグストアもある。それは北海道の地場大手ドラッグストア「サッポロドラッグストア」(以下「サツドラ」、札幌市)だ。サツドラは2015年にマレーシアに、2017年に台湾に出店。台湾では店舗網を伸ばしており、8月現在6店舗を構える。

 同社がウリにするのは、地元の同業他社とは一線を画した「日本」、そして「北海道」「札幌」ブランド。現在、北海道は台湾や香港など東南アジア諸国において人気の旅行先となっており、現地百貨店の「北海道物産展」にも多くの人が押し掛ける。サツドラは「現地に根付いた品揃え」のみにこだわることなく「日本の正規商品」と「北海道・札幌ブランドの商品」を前面に押し出すことで人気を集め、「北海道生まれのドラッグストア」として順調に店舗を増やしつつある。ちなみに、同社は千歳空港などにおいて北海道土産などを販売するアンテナショップ「北海道くらし百貨店」を4店舗運営しており、「北海道・札幌ブランドの商品」を売り出すことへのノウハウは十分だ。

 サツドラは店舗の9割以上が北海道内にある地域ドラッグストアにすぎない。日本の大手各社とは一味違う「北海道人気にあやかった」戦略により、今後どこまで海外店舗網を増やしていくことができるのか注目される。

 また、台湾ではサツドラ以外にも「日本ブランド」を全面的に押し出すことで、急成長を遂げたドラッグストアがある。それが2011年に展開を開始した「ニチヤクホンポ」(日薬本舗)だ。

◆「日本」ブランドを売りにした台湾チェーン

 サツドラの戦略が「毎日が北海道物産展」であるとすれば、こちらは「毎日が日本物産展」。同社は台湾資本ながら、「商品の多くが日本の正規商品」であることに加えて、大型店に設置された「お祭り」「駄菓子」「神社」など日本文化を紹介する売場が話題を呼び、創業から僅か8年で52店舗(7月現在)を構える台湾大手のドラッグストアとなった。

 数年前、中国人観光客の「爆買い」によって日本国内の一部ドラッグストアでオムツが品薄状態となったことは記憶に新しいが、現在もこうした日本の薬や衛生関連商品、菓子類などはアジア諸国で大きなブランド力を持つ。ニチヤクホンポの「急成長っぷり」を見るに、まだまだ日本のドラッグストアは海外での成長余地があるといえよう。

 さて、今回は大手各社の「海外展開」に目を向けたが、次回は再び「日本国内」の話に戻る。

 ひとことにドラッグストアといっても「郊外型」と「都心型」ではその品揃えにも大きな差が生じてくる。次回の記事では、ドラッグストアの「立地形態」と「販売品目」の関係性について注目していきたい。

【参考文献】

●孫 維維(2015)「中国におけるドラッグストア研究 : 事例研究 : ワトソンズの成長要因に関する考察」商学研究所報 47(2), p.1-43,巻頭2p.

●デロイトトーマツグループ編(2019)「世界の小売業ランキング2019」デロイトトーマツコンサルティング(同社リリース).

<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

関連記事(外部サイト)