韓国でラブドール輸入に20万人以上が抗議し、議論に。政府は「”隠密領域”には介入しない」

韓国でラブドール輸入に20万人以上が抗議し、議論に。政府は「”隠密領域”には介入しない」

KBSニュースより

 韓国の複数のメディアが報じたところによれば、韓国内において「ラブドール」(韓国では「リアルドール」と呼ぶ)の輸入の合法化に反対する人たちによる、青瓦台(大統領府)への「国民請願」数が、7月末現在で20万人を超え議論の的になっている。

 特にフェミニズム運動の機運が高い韓国国内において、女性たちの反発意見が強い。

 ラブドールの製作技術の進歩により、購入者がその造形を細かに指定できる状況で、仮に造形のモデルになった女性が、その事実を知ったらどう思うのか。これは肖像権や猥褻罪の問題ではなく、女性の尊厳の問題であると。

◆韓国「ラブドール騒動」の経緯

 事の始まりは2017年だった。韓国内の業者がラブドールを海外から輸入しようとしたのだが、仁川の税関で通過保留の処分を受けた。

 業者側はすぐに提訴。韓国関税法第234条と第237条では、「憲法秩序を乱す、風俗(公序良俗)を害する物品」の輸出入は出来ないと規定しているが、業者側は「個人の性的な決定権行使に干渉しており、憲法上の基本権を侵害している」と反論した。

 当該ラブドールは、裁判所に証拠物として提出され、前代未聞のラブドール裁判は加熱した。一審においては、「猥褻物」として輸入を認めなかったが、二審では「個人的な性的器具」という理由で判決が引っくり返った。

 仁川税関は大法院(最高裁判所)に上告したが、大法院は二審の判決を支持、上告は棄却された。ラブドールは「社会的有害物」ではなく、あくまで「個人の嗜好品」として認定され、これによって韓国内においてラブドールの販売が開始された。

◆「性的器具に国家はなるべく介入しない」

 二審の判決文における「ラブドールは公序良俗を乱す猥褻物とは認められない。性的器具は人の隠密な性行為に用いられるもので、このように私的で隠密な領域に、国家がなるべく介入しないことが、人間の尊厳と自由を実現する道になる」という文句が、どこか真面目でばかばかしく、筆者個人的には印象的だ。

 韓国内では近年「猥褻物」の定義を広げる傾向にあるという。

 ちなみに韓国内では、猥褻動画の流布や青少年の性的描写に対しては固く禁じており、今回の「ラブドールは個人的な性的器具」という大法院判断と、一方で「猥褻物」を厳しく取り締まる判断との整合性について疑義を呈する弁護士たちもいる。

 どこかで聞いたような話でもあるが、昨年5月に大法院では、幼く見える女性が男性と性的行為に及ぶ漫画や動画を「猥褻物」と規定し、それを流布した被告人に実刑判決が下った例がある。「社会的平均人」の視点から、アニメーションの女性キャラクターが明白に「青少年」であると認識できるというのが判決の要旨であった。

◆「ラブドールに似せられた女性が知ったら衝撃を受けるだろう」

 また先月29日に大法院は、ファイル共有サイトにおいて、猥褻動画を直接アップロードするのではなく、リンクを貼っただけでも猥褻物の流布罪として罰しなくてはならないという決定も下している。

 韓国の女性弁護士は、このような「アニメーションの猥褻物と認定しながら、ラブドールを性的器具と分けて考える基準に納得がいかない」としながら、「最近ではラブドールの造形を、購入者が細かく指定出来ると聞く。もし似せられた女性がその事実を知ったら、その衝撃や精神的苦痛は計り知れない」と指摘した。

 更に今後ラブドールに人工知能(AI)が搭載されれば、単純な男女間の対決の問題を飛び越え、ロボットが性的器具として活用されるべきかという、複雑な問題にも発展しかねないと危惧している。

 ラブドールは猥褻物なのかという論点で始まった裁判が、社会的な広がりを見せるなか、女性蔑視を糾弾するフェミニズム運動に変容した。

◆韓国人男性「誰にも迷惑をかけていないのに」

 この度のラブドールの騒動における男性側の代表的な意見も書き添えて置く。

「男性の自慰器具にまで女性団体が関与する理由が分からない。独りで誰にも迷惑かけまいとしているのに、なぜそれすらも非難するのか。女性が男性を嫌うのと同じように、男性も女性だからと言って何でも良い訳ではない」

「他人が人形を抱いて寝ようが寝まいがほっといてほしい」

「二審の判決を支持する。私的な領域における国家干渉の最小化は正しい。姦通罪廃止(2015年)の大きな理由は『国家が個人の布団の中まで意見してはいけない』ということだ」

 ラブドールの輸入を禁止して欲しいという青瓦台への国民請願が20万人を超えたということは記事の冒頭で紹介したが、8月6日現在では26万人を超えている。ちなみに反対意見である「ラブドールの輸入は許容されなくてはならない」という請願活動も同時に行われているが、この請願に対する賛同者はまだ2000人にも達していない。

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

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