中国、米国と結びつきが強いコロンビアで、ボゴダの地下鉄を落札。その背後に不自然な「忖度」か

中国、米国と結びつきが強いコロンビアで、ボゴダの地下鉄を落札。その背後に不自然な「忖度」か

photo by Metro de Bogoda

 南米コロンビアで今月、首都ボゴタの地下鉄の建設を中国企業が落札するという出来事があった。ラテンアメリカで最近の中国の進出が目覚ましい中で、この受注もまた中国の躍進のひとつだという捉え方だと特に注目を惹くものではない。

 ところが、このプロジェクトは当初から中国企業が落札するようにセットされていたということを連想させる受注なのであるというから穏やかではない。

◆ドゥケ大統領の訪中で一気に関係が進展!?

 ドゥケ大統領が中国の習近平主席に招かれて初めて中国を訪問したのは7月末であった。ラテンアメリカ諸国に積極的に進出している中国にとってコロンビアはこれまで進出が後手になっている国であった。特に、コロンビアは米国にとって南米の航空母艦の国と称されるほどに両国の信頼関係は厚く、中国がコロンビアに積極的に進出するのはまだ先のことと想像されていた。ところが、予想に反して中国はくさびを打ち込むようにコロンビアに進出を開始したというわけである。

 今回のドゥケ大統領の初めての中国訪問で両国の進展が約束された。2002年からこれまで中国はコロンビアには2億4000万ドル(264億円)しか投資していなかったのであるが、今後エネルギー部門だけでもコロンビアに10億ドル(1100億円)の投資を約束した。

 更に、中国はコロンビアのアンティオキア県の北部の農業地帯と同県庁でコロンビアの第2都市であるメデジンとを結ぶ道路の建設に4億ドル(440億円)の融資を約束した。(参照:「BBC」、「CGTN」)

 そして、コロンビアからアボガド、コーヒー豆、バナナ、花などの輸出の拡大も確認された。

 以上のような手土産をもらってドゥケ大統領は帰国したのであった。

◆中国のコンソーシアムが落札した地下鉄建設

 それから僅か2か月半してコロンビア政府は首都ボゴダーの最初の地下鉄建設に中国のAPCAトランスミメトロ・コンソーシアムが請け負うことを発表したのである。それはつまり、中国港湾工程有限責任公司(CHEC: China Harbour Engineeering Co.,Ltd)と西安地鉄(Xi’An Metro Co.,Ltd.)と組んで落札したということであった。

 その協力企業としてスペインにあるBombardierとブラジルのCRRC Chagchun Do Brasil Railways Equipment & Serviceが加わることになっている。

 落札価格は13兆ペソ(40億円)、全長24キロ、全部で16駅、地上13メートルの高架式を採用。高架式に決まったのはコロンビアはゲリラ組織が現在も暗躍しており地下式よりもより安全性が高いと評価されたからである。(参照:「El Pais」)

 第2都市メデジンには地下鉄はあるが、人口700万人の首都ボゴターにはこれまで地下鉄は存在していなかった。70年前から地下鉄建設のプランが取り上げられてその後消滅するということを繰り替えしていた。グスタボ・ペトロ前市長の時も建設がプラニングされたが実現しなかった。この時は今回決まった高架式ではなく地下に建設することが計画された。常に政治的な問題が絡んで建設が具体的に決まらない状態であった。

 この地下鉄建設の入札には当初5社が名乗りを上げたが、最終的に応札したのは2社であった。APCAに対抗して応札したのは、メキシコの2社Carso Infraestructura y Constucci?nとPromotora de Desarrollo de Am?rica Latinaにスペインから1社FCC Concesiones de Infraestructuraが加わって組織されたメトロ・デ・ボゴター・コンソーシアムであった。(参照:「El Economista」)

 問題はメトロ・デ・ボゴターの方が敢えてAPCAよりも高い見積もりにして後者が落札するようにしたということなのである。

◆落札自体が出来レース?

 それを指摘したのは上院議員ロドリゴ・ララだ。彼の説明によると、2つの応札で一方がもう一方よりも高い価格で見積もるというのが事前に決められていたということだ。結局、双方の応札の見積もりの差はおよそ3000億ペソ(96億円)の差になっていた。

 しかも高い方の見積もりをしたコンソーシアムは無効になることが決まっていたということなのだ。というのは、メトロ・デ・ボゴターを指揮したのはカルロス・スリムという人物である点だ。彼はパナマの検察と合意には至ったものの、汚職の前科がある人間であり、汚職の前科がある人物の指揮するコンソーシアムは落札から外されるべきだという理由からだ。因みに、カルロス・スリムはメキシコ人でフォーブス世界富豪者番付5位にランキングされている。(参照:「RCN RADIO」)

 この受注の正式署名は12月に予定されており、工事は2020年4月から着工して完成は2025年末に予定されている。

 今回のような事例から察して、2007年にパナマ運河の拡張工事をスペインのゼネコンが受注したが、今それをやるということになっていれば中国企業が受注する可能性が非常に高いように思える。現在パナマ運河の最大の顧客は中国で、しかも両国の間で国交も樹立したからだ。

<文/白石和幸>

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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