現在メキシコで最凶となっているカルテルCJNGに対抗すべく、他のカルテルが団結して200人の殺し屋を送り込む

現在メキシコで最凶となっているカルテルCJNGに対抗すべく、他のカルテルが団結して200人の殺し屋を送り込む

SNS上にアップされた殺し屋集結の模様

 メキシコの麻薬組織カルテルで現在最も勢力を振るっているのがハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)である。リーダーのネメシオ・オセゲラ・セルバンテス(通称エル・メンチョ)は次の「麻薬王」になるだろと米国麻薬取締局(DEA)が見ている人物だ。この2年間で3つの州にも勢力を拡げ、現在32ある自治州の内の25州で活動している。

◆最凶カルテルが地方のカルテルのシノギを横取り

 最近のメキシコではカルテルが分裂する傾向にある中にあって逆に勢力を拡大しているのが狂暴なCJNGである。米国ではCJNGを同じく狂暴で急成長したイスラム国と比較している。CJNGが勢力を伸ばすことによって縄張り争いから他のカルテルとの対立も激しくなっている。シナロアもその対立しているカルテルのひとつだ。

 CJNGに対抗すべく他のカルテルが団結した動機となったのが、グアナフアト州で石油パイプラインから石油を抽出し転売して利益を稼いでいた地元カルテルのサンタ・ロサ・デ・リマのシノギを横取りするかのように進出して来たのがCJNGだからである。

 特に、グアナフアト州でこの抽出による盗難ビジネスが盛んになったのはメキシコ最大の石油会社ペメックス(PEMEX)のパイプラインの3分の1が同州に設置されているからだ。

 ところが、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)が大統領に昨年12月に就任してから彼が最初に取り組んだのがパイプラインからの石油の抽出を防止させることであった。そこで、パイプラインによる石油の供給をやめてタンクローリ車で石油を輸送するようにした。ということで、この石油の抽出は7割減少した。それに代わるシノギとなったのが誘拐、強盗、ゆすりなどである。

 例えば、セラヤ市のホテルではカルテルに毎月2500ペソ(14000円)を納めるようになっている。それを拒否すれば何らかの妨害を受けることになるからである。(参照:「Infobae」)

◆地元政治家や警察を買収し、治安を悪化させるだけのCJNG

 CJNGが同州でも次第に支配を強めて行った背景には地元の政治家や警察の幹部との絆を強めていったからである。資金力のあるCJNGは彼らに賄賂を配るのは得意である。(参照:「El Espanol」)

 グアナフアト州は比較的犯罪の少ない州であったがCJNGが進出して来てから地元カルテルとの衝突などもあって殺害事件も急増して行った。2006年は242人が殺害されたのに対し、2009年404人、2012年771人、2016年961人、2017年1096人、2018年4282人という恐ろしいほどの殺害被害者増加率となっている。

◆最凶カルテルに対抗して他のカルテルが共闘

 そこで地元カルテルのサンタ・ロサ・デ・リマはシナロアなどに救援を望むようになっていた。

 実は、これに対してシナロアは当初消極的であった。CJNGがシナロアを脅かすことがなかったからだ。シナロアではそのリーダーのエル・メンチョもいずれ逮捕されると見ていた。ところが、CJNGは逆に積極的にしかも大胆に投資などをしていたことからシナロアと縄張りがかち合う市場が生まれるようになってきた。(参照:「Sin Embargo」)

 そこでシナロアは遂に腰を上げたのである。シナロア、ロス・セタス、デ・ゴルフォやカルテル・デ・グアダラハラの設立者カロ・キンテロらが団結しておよそ200人の武装した殺し屋を、CJNGがコントロールしているビリャグラン市に集結させたビデオがネットに載った。(参照:「Vanguardia」)

 TwitterやYou Tubeでもまだ拡散している。

 シナロアはエル・チャポが米国の刑務所に収監されてから、組織の動きが停滞するのではないかと見られていた。ところが、息子の一人オビディオ・グスマンが先月国家警備隊に逮捕されたが、シナロアの猛攻な反撃を受けて釈放せねばならなくなったという事件があってからシナロアは現在も健在だという証拠を見せつけたのであった。

 これからメキシコはCJNGの勢力を挫くべくシナロアをリーダーとして他のカルテルと一緒になっての攻防が激しく展開しそうだ。

<文/白石和幸>

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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