遂にエアー・イタリーも破産宣告。激化する欧州航空業界の熾烈な戦い

遂にエアー・イタリーも破産宣告。激化する欧州航空業界の熾烈な戦い

photo by BriYYZ via flickr(CC BY-SA 2.0)

◆欧州LCC、またしても倒産

 ヨーロッパで格安航空(LCC)がまた1社倒産した。僅か15年前の2005年に設立されたエアー・イタリーだ。2018年2月までは旧社名メリディアナ航空と呼ばれていた。

 エアー・イタリーは2022年には利用乗客者数1000万人、機材50機を構えるというプランを持っていた航空会社だった。ところが、2018年が1億6400万ユーロ(194億円)の赤字、2019年も2億ユーロの(236億円)の連続赤字ということで、持ち株51%を所有している産業グループのアリサルダ(Alisarda)が今後の投資を控えるという決定を下した。それが引き金となって経営陣は破産宣告をすることを決定した。(参照:「Aviacionline」、「VozPopuli」)

 残り49%の株はカタール航空が所有しているが、2つの理由から同じく新たに資金を投入することを拒否した。

 ひとつはアリサルダが今後も経営を続けることを拒否しているということから、今後のエアー・イタリーの伸展性は非常に低いということ。もうひとつは、カタール航空が資金を投入して持ち株を増やすとEU圏外の企業が過半数の株を持つことになり、EUの航空規定によって圏内での同航空の自由な路線網の構築ができなくなるという理由からである。

 現在のエアー・イタリーの保有機材は9機、ベース基地はミラノのマルペンサ空港で、サルデーニャ島の住民にとっては重要な航空会社であった。

◆ 激化する欧州エアライン市場

 2000年から2016年までにヨーロッパで154の航空会社が誕生したが、これまで107社が市場から姿を消している。例えば、スペインだとその数は30社に及ぶ。(参照:「Aviacionline」)

 その中にフトゥラ(Futura)という航空会社があったが、チャーター便が専門だった。筆者が記憶しているのは、この航空会社の機材を利用してバレンシアからイタリアのミラノの家具展示会に出展するのにバレンシアの家具メーカーのスタッフが貸し切りで往復していた。筆者もそれに2年続けて同乗したことがあった。

 現在のヨーロッパの航空市場は5つのグループが63%の市場を占有しているという。この5つのグループとは、「エールフランスーKLM」、「IAG(ブリティシュ・エアウエイズとイベリア航空の連合)」、「ルフトハンザ」、「ライアンエアー」、「イージジェット」で、この各グループの傘下にLCCの航空会社も所有している。

 このような寡占市場にあって、残りの市場を中小の航空会社が乗客の奪い合いをやっている。LCCの登場で乗客も大幅に増えている。しかし、航空会社にとって一番の問題は燃料コストの負担である。一般に燃料コストは各フライトの50%を占めるとされている。

 そのコストを補填する意味でライアンエアーなどが採用している手荷物までチャージを請求するといった方法でコストを削減している。現在のライアンエアーでこのようにしてチャージで稼ぐ金額は同社の売上の30%を占めるまでになっているという。

◆値下げ競争の行き着く先

 昨年3月に倒産したWOWエアーの社長だったモゲンセンは、「航空会社は乗客から料金を取る代わりに、飛ぶための料金を乗客に支払う。その代わりに航空会社は乗客が座席を選ぶのに料金を徴収する。更に、乗客は事前予約料、機内での食事代、ホテル、レストラン、レンタカーその他旅行に関係したものなどと提携して乗客がその料金を支払う。それが航空チケットの代金を上回ったものになる」「航空チケットの料金は段々と安くなり、マイナス料金にまでなってしまう。だから乗客を獲得するためには航空会社が乗客を確保するための費用を負担するようになる」と語っていた。

 正にこのような現象が起こる可能性がある。その意味で、ライアンエアーは率先してフライトに間接したサービスの面で料金を徴収するという手段を選んで乗客にコストの一部を負担をしてもらうというポリシーを選択したということだ。(参照:「La Vanguardia」)

◆ 英国のEU離脱でさらなる嵐が吹き荒れる!?

 今年は英国のEUからの離脱が航空業界にも必ずマイナス影響を与えることになるが、その規模が全く未知数でそれに耐えるにも中小の航空会社では容易ではなくなる可能性がある。更にLCCにとって重大なのはボーイング社の737MAXがいつから安全に供給されるようになるのかという問題である。この機材は出来るだけ多くの乗客を低コストで運航させるという意味で貴重な機材であった。ライアンエアーはこの機材が当面は使用できないということで人員の削減も予定している。そしてコロナウイルスの問題もまた深刻だ。これで飛行機の利用率が世界的に大幅にダウンするのは必至である。

 このような困難をこれからも抱えての運営に別れを告げるかのように、スペインではイベリアのライバルであったエール・ヨーロッパが昨年IAGに売却した。これも丁度良い時期に売却したとも言われている。エール・ヨーロッパの保有機材は40機、従業員3800名。国内とラテンアメリカで強い路線を持っているが、長期的に見ればIAGと競争して行くことが難しくなると見たようだ。そこで、現在まだ勢いのある内に売却した方が賢明と考えたようである。

 この先4年以内にヨーロッパの航空業界は6つのグループが市場を占有するようになると予測されている。前述した5つのグループに加えてハンガリーのウイズエアーが6番目のグループとして加わると見られている。(参照:「Aviacionline」)

<文/白石和幸>

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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