突然の入出国制限にロックダウン! 新型コロナで留学生活が暗転。在留邦人たちの悲哀

突然の入出国制限にロックダウン! 新型コロナで留学生活が暗転。在留邦人たちの悲哀

夜間外出禁止令で閑散とするセブのメインストリート

◆フィリピンで軟禁状態!? 航空券高騰で帰国不可能……

 いつになったら我々は新型コロナウイルスの脅威から解放されるのか……? 今や世界の累計感染者数は60万人弱。3月27日には米国の感染者が10万人を超え、イタリアの死者は中国の3倍にもなる9000人を突破した。中国では終息の兆しを見せる一方、ウイルスの拡散は地球全体に及んでいるのだ。そんな感染拡大の恐怖を、人並み以上に感じている人たちがいる。異国に取り残された在留邦人だ。

「突然、航空会社からフライトキャンセルの連絡が来て、4回も航空券の取り直しをさせられた。僕は運よく3月21日に帰国できましたが、今でもフィリピンには帰りたくても帰れない仲間が大勢いる」

 こう話すのはセブ島に語学留学中だった20代男性だ。このセブ島は近年、英語の語学留学が盛んなことで知られるリゾート地。島内には、日系だけでも約70の語学学校が点在し、1000人以上の日本人がリゾート気分も味わいながら語学の習得に励んでいたという。だが、3月12日に事態は一変。フィリピン国内の感染者は52人にすぎなかったが、ドゥテルテ大統領が首都マニラの封鎖を発表。その翌日から国内線が全便欠航になり、航空会社はパンク状態に。21日からは国際線も制限がかかり、帰国できない“留学難民”で溢れ返ったのだ。実はその最中に、筆者は友人を訪ねてセブ島にいた。

 入国したのは3月12日。首都封鎖を受けて、セブの防疫対策も強化されていた。あらゆる商業施設ではアルコール消毒と体温チェックが義務づけられ、スーパーではマスクなどが品薄の状態に。一方で、飲食店は通常営業で夜間の外出は自由にできた。しかし、16日になると、半数以上の店舗が休業を決定。セブ島名物のカラオケクラブや、マリン・アクティビティもストップし、観光サービスは壊滅したのだ。その頃には帰国希望者が急増。航空会社のオフィスを訪ねると、帰りの航空券を求める人で溢れ返り、ウエイティングの番号札は1000番台を超えていた。

◆チケット高騰で帰国時は3倍以上の価格に

「3月20日までの帰国便は完売で、定期便はすべてキャンセル。現地の日本人会が航空会社に掛け合って手配してくれた臨時便で何とか帰国できましたが、セブに来るときは往復4万円程度の航空券だったのに、帰国時は片道だけで3倍以上の出費。なかには片道27万円という高額航空券もありました。入社式まで日がなく、何が何でも帰る必要があったので支払いましたが、国や州、市が発表する情報がバラバラなうえに毎日状況が変わるので、実際に帰国するまで気が気でありませんでした……」

 筆者がフィリピンの友人を訪ねたときに、現地で出会った男子大学生はこう語る。春休みを利用しての旅行だったが、バカンス気分など味わえぬままセブを後にしたという。

 実は、こうした臨時のチャーター便によって、3月28日時点で約1400人の日本人が帰路に就いている。だが、そのチャーター便も28日を最後に運休。少なくとも4月中旬まで国際線は復旧しない見込みのため、100人程度の留学生が今なおセブで“軟禁状態”にあるのだ。実際、今も滞在中の留学生の一人は「帰りの航空券は高騰しすぎて買えず、滞在先は閉鎖してしまったので、休校した語学学校に寝泊まりしている」と話す。夜間外出禁止令が出され、街中を自由に歩き回ることもできない状況。その不満は高まる一方のため、普段は温和な現地のフィリピン人から嫌がらせされる日本人も出てきている。別の日本人留学生が話す。

「現在、夜間はまったく出歩けず、昼間であっても買い物など必要最低限の外出しか許可されていません。僕も極力出歩かないようにはしているのですが、先日、買い出しのために出歩いてから、外出するのが嫌になってしまいました。道端で目が合った現地の人が僕を見ながら、鼻をつまんで距離を取ったんです。『この日本人は新型コロナに感染していてヤバそうだぞ』といった具合に……。その差別的な扱いに対する悔しさと悲しさで、もうどうでもいいわと投げやりな気持ちになりました」

◆銃を突きつけられて財布を取られる日本人

 嫌がらせにとどまらず、命の危険を感じた在留邦人もいる。島内の語学学校に勤務する日本人男性2人は、「夕暮れ時に人気のない通りを歩いていたら、突然、拳銃を突きつけられてカバンや財布をすべて奪われた」と話す。セブ島には拳銃を所持した警官や軍人たちが目を光らせているが、無抵抗な観光客などを狙った“不良”も少なくない。外出禁止令で経済活動がストップしたことで困窮し、悪事に手を染める現地人が増えつつあると考えられる。日系語学学校の現地マネジャーも次のように現地の状況を明かす。

「今回の新型コロナ騒動で、多くの語学学校は閉校に追い込まれるでしょう。留学生への返金保証をしているところもあれば、そうでないところもある。つまり、保証をしているところは軒並み倒産リスクを抱えている。留学の問い合わせは、3月頭を最後に途絶え、予約もすべてキャンセルで膨大な赤字。4月中旬から学校再開の声もありますが、現状を見ると難しいでしょうし、1年以上の長期戦となる可能性もある。仮に再開しても、この時期に留学する人はいないでしょう。数か月にわたり一切の収入が断たれる可能性が高く、この先どう生活していけばいいか途方に暮れています……」

 語学学校に限らず現地で働く日本人は給料の支払いも保証されない状態だ。別の語学学校関係者が言う。

「一律で休校が決定している4月24日までの1か月間、職員は有休消化で凌ぐことになります。ただ、それ以降はどうなるかわからない。セブ市は28日からロックダウンとなり、出社も不可能となりました。正直、給与の支払いすら怪しい。ほぼすべての産業が壊滅的な状況で、日本人だけでなくフィリピン人も職を失う人が大量に出てきている。国からは日本円で約1万円の臨時支給があるそうですが、雀の涙ほどの額で何の解決にもなりません」

◆ホテル封鎖で行き場を失ったマニラの観光客

 より悲惨な状態にあるのが首都マニラだ。一時的に出国の術を失った観光客に追い打ちをかけたのが、政府が発表した国内ホテルの新規予約の停止。これにより、4月14日までマニラのホテルは封鎖状態となった。日本人駐在員が、惨状を明かす。

「4000人以上の観光客がホテルを強制的に追い出され、宿泊先を見つけられない事態に追い込まれたんです。野宿を強いられた人も大勢おり、ホームレス同然の生活で凌いでいた観光客も見かけた。もともと治安が悪いマニラで野宿は非常に危険。新型コロナ騒動で金銭的に厳しくなった人々が溢れて治安が悪化し、“リアル北斗の拳”のような状態ですよ」

 新型コロナは命だけでなく、理性をも奪いかねない。異国の地で孤立する邦人たちの苦悩は続く……。

◆「バツイチおじさん」が目にした非常事態宣言下のタイ王国

 日本人に人気の観光地、タイの感染者は3月25日に1000人を突破。これを受けて非常事態宣言が出された。そんな入国禁止のタイに、’18年まで「日刊SPA!」で「世界一周花嫁探しの旅」を連載した“バツイチおじさん”こと後藤隆一郎氏が滞在している。

「いち早くマッサージ店など濃厚接触のリスクがある店は休業になり、出稼ぎ労働者は続々と田舎に帰っています。入国時に普段、旅行者で賑わっているバンコクのカオサンロードを訪れたらガラガラでした」

 ただし、混乱は限定的とか。

「タイ当局の力が強いうえに、買い占めや不要な外出などの違反行為には2年以下の禁固ないしは4万バーツ(約12万円)の罰金が科されるので、買い出しや食事には不自由しない」

 タイの現状を知りたい人は後藤氏のYouTubeにアップされているとのこと。

後藤氏のYouTubeチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」

◆ついに首相・閣僚も感染!混乱深まるイギリス

 3月27日にはボリス・ジョンソン首相が新型コロナ検査で陽性だったことが判明。さらに保健相も陽性。英国在住者によると、英国政府つきの感染専門家も陽性の疑いから自主隔離となり、刑務所内での感染も判明したとか。ロンドン市内のスーパーは入場制限をかけているため、物資を求める人が1時間以上も並んで入店しているという。

<取材・文・撮影/栗田シメイ>

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