スペインで「スペイン語」が公用語でなくなった!? 日本人が知らない、スペイン語圏の2020年の話題を振り返る

スペインで「スペイン語」が公用語でなくなった!? 日本人が知らない、スペイン語圏の2020年の話題を振り返る

スペイン・バレンシアの街並み。コロナ以前であればこの広場はオープンエアのテーブルで飲食を楽しむ外国人観光客でごった返していたが、誰もいない(撮影/筆者)

 「新型コロナウイルス」という感染症によって、大きく生活が変わってしまったヨーロッパ。特に、筆者が住むスペインは、その被害も甚大で、2021年を迎えた今もなお、いまだ回復の見込みは見えてこないままだ。

 今回は、日本語や英語圏では話題になりにくい、2020年にスペインやラテンアメリカで起きた話題を振り返ってみたい。

◆コロナ禍の打撃を大きく受けたスペイン

1.スペインでの新型コロナ感染

 クリスマスイブの時点でもまだ一日のスペインでのコロナ感染者は1万人近くを記録している。これまでの累計死者数は5万人。その中で一番多く死者を出したのはマドリード州の1万1700人。

 ところが、実際の死者の数はそれよりも多いとみられており、最低でも1万2000人多いとされている。というのも、3月から5月のまだコロナパンデミックに取り組む体制が出来ていなかった期間に特に老人ホームの高齢者が死亡したことに集中しているからだ。

 公式にコロナによる感染で死亡したと認定されるにはPCRテストを実施したというのが条件となっている。3月から5月の期間は老人ホームでのPCRテストは殆ど実施されていなかった。またそれをできる体制にもなっていなかった。老人ホームで高齢者の死者の多さの前に部屋で死亡した状態のままで数日間放置されたままであったという場合さえあったほどだったのだ。

2.コロナ感染の影響でスペイン経済はガタガタ

 3月から6月までスペインは完全封鎖を実施してコロナ感染に取り組んだ。住民が外出できるのは食料品の買い出し、薬局やキオスクに行くだけに限られた。居住している地区以外の場所に勤務する場合はそれを証明するものが必要とされた。

 それ以後も今日まで地域ごとの封鎖が実施されている。それでも感染者の数は衰えない状態が続いている。

 これがEU全域で発生していることから、観光立国であるスペインには外国からの観光客の訪問が昨年比83%の激減。その影響で経済の後退は余儀なくさせられ、今年のGDPはおよそ11%の後退が予測されている。これほどまでの後退はスペインの内戦時まで遡らねばならない。特に、観光事業に関係した旅行代理店、飲食店、ホテルなどはその20%が廃業または倒産を余儀なくさせられるのが見込まれている。

◆スペイン語語メディアが悲しみに暮れた訃報

3.ディエゴ・アルマンド・マラドナの急死

 マラドナはアルゼンチンの英雄でありまた神様であった。彼はグランドで名プレーをして4500万人のアルゼンチン人に幸せを与えていた。現大統領のアルベルト・フェルナンデスもその幸せをもらっていたひとりだった。マラドナは自らの名声を常に意識していたようで、その重圧に耐え続け行くことに精神的疲れを感じてコカインの常用者になってしまった。

 マラドナはどのチームでもキャプテンになる役目を持って生まれたようで、弱小チームナポリでプレーをするようになった時もリーダーとしてチームを引っ張り、退部する時は神様と称されるようになっていた。

 だから、ナポリではマラドナが亡くなったという訃報の前に11月27日の午後8時45分にナポリの市民は住んでいる家のバルコニーから一斉に拍手を送って彼への感謝を表現した。

 また、アルゼンチンではマラドナへの感謝と彼の死を悼むために国中で100万人以上の市民が市街を行進した。大統領官邸内に安置された彼の棺の前に弔問した人の数は予想を遥かに超えて予定を3時間延長せねばならなかったという。その中にはそれに間に合うように1000キロを車で走行した人もいた。(参照:「El Periodico」〉

◆コロナが襲うラテンアメリカ。中国の進出も

4.ラテンアメリカで最大のコロナ感染国ブラジル

 2月29日の段階でコロナ感染者は僅か1人であったのが、11月12日の時点で累計感染者678万人、死者18万人。〈参照:「statista」〉

 これだけ短期間に急激に感染者そして死者が急増したのは、ブラジルではファベラといったバラックの家が密集しているところが多くあり、そこでは感染者が自主隔離するのは殆ど困難である。またボルソナロ大統領のコロナ感染について風邪を引いたような認識しかもたず、しかも人命尊重よりも経済優先を選択した結果によるものである。

5.中国漁船の南米での乱獲

 エクアドル、チリ、アルゼンチンと中国漁船団による乱獲がますます盛んになっている。漁船団の数は200隻以上。2018年8月にエクアドルのガラパゴス諸島付近での漁では297隻の漁船が終結して300トンに及ぶ魚を積んでいたということも判明している。また、保護水域には入っていないとしても、そのギリギリの地点で網を張って保護水域から出た魚を捕るような体制にしている。GPSをオフにして追跡されないようにして乱獲している。主にイカ漁を中心に漁をしている。

 それに対して乱獲の対象にされている国は緊密に連絡を取り合って米国からの応援追跡もあって海軍が先頭に立って取り締まりに取り組んでいる。

6.エクアドルではコロナによる死者の遺体を路上に放出

 今の日本では絶対に起こりえないことが南米エクアドルで3月から4月にかけて起きた。コロナ感染による死者が多すぎて遺体の回収ができない状態が続いた。その影響で家で長く遺体を安置させておくと気温が摂氏30度を超していることから悪臭を放ち外に放出するという事態が発生したことだ。それが人口270万人の海岸都市グアヤキルで頻発した。当時、グアヤキルでは遺体を埋葬するのに2000コの穴が掘られていたという。

◆スペイン語はもはやスペインの公用語ではなくなった!?

7.スペイン語がスペインで公用語ではなくなった

 スペイン憲法3条において「カスティーリャ語はスペインの公用語であり、全てのスペイン人がそれを知る義務があり、それを使用する権利をもっている」と規定している。また、2013年に施行された教育法でも「スペイン国家のカスティーリャ語が公用語であり意思疎通を図る全国共通の言語である」という定義がなされていた。それが社会労働党とポデーモスの連立政府によってスペイン語が公用語であるという定義が削除されたのである。

 これはカタルーニャのカタラン語を意識しての教育改正法である。もちろん、政府はカスティーリャ語(スペイン語)について、各自治州が指定する言語と同様にその教育を受ける権利があることを補償している。しかし、新教育法ではスペイン語を受ける「権利がある」としてはいるが、それを学ぶ「義務がある」とは規定されていないのである。しかも、公用語であるという定義も削除された。ということは、スペイン語は英語やフランス語と同様のレベルにおいても問題はないということになる。

 この件については、スペインでも国論を2分する議論となっている。

8.スペインで2行が合併して資産高で最大の銀行が誕生した

 合併したのは業界第3位のカイシャバンクと5位のバンキアである。合併しての銀行名は前者が後者を吸収するような形でカイシャバンクを維持し、バンキアの銀行名が消滅することになった。資産総額は6500億ユーロ(78兆円)となる。

 前者は2020年度の「世界の価値ある銀行トップ500」の中で80位、後者は170位にランキングされている。この2行が合併する前まではサンタンデール銀行がスペインではトップで、前述した銀行トップ500の中では13位にランキングされている。

 銀行でもデジタル化が必要となっており、デジタル銀行も誕生して従来の銀行の市場を奪っている。そのようなこともあって利益率も下降している。合併することによって薄利マージンでも資金力でもって市場で存在価値を示して行こうとする計画だ。その為には支店と社員の多さも気になる。今回の合併によって社員8000人の削減と一つの都市で重複する1400支店の削減とさらに採算に乗らない支店の削減が予定されている。

◆人が来られなくなった「観光立国」の悲劇

9.スペインの外国からの観光客の激減を象徴するバルセロナのラ・ランブラ通り

 ラ・ランブラ通りは年間で延べおよそ1億人から1億2000万人が訪れる世界を代表する観光名所のひとつ。今年はコロナ禍で例年の25%程度して訪問客がないという。その影響を受けてこの通りに面したバル・レストラン・土産物店などが軒並み閉店している。その数はおよそ800軒。この通りで働いている1万人の雇用の今後の行方が懸念されている。この通りに面して花屋は17軒あるが、その内の7軒は廃業を余儀なくさせられたそうだ。

 1992年のバルセロナオリンピックからガウディーの作品をアピールして世界で注目される都市となったバルセロナであるが、コロナから回復した時点でガウディの作品を中心としたアピールだけでは滞在費も他の都市に比べ割高になって観光客を呼び戻すことは難しいという意見もある。

 実際、バルセロナに続くスペイン第3の都市バレンシアがコロナ禍の前まで急激に観光客が増加していた。

10.日産がスペインから撤退を決めた

 今年5月、バルセロナにある日産のスペイン工場が今年いっぱいで閉鎖することが決定された。40年近く続いた工場であったが、日産のルノーとの関係から絡む国際戦略、英国がEUから離脱することで英国にある日産工場により比重を置くことになった。4-5年前から撤退の噂があった。当初20万台が生産可能な設備を持っていた工場が今年はその10分の1の生産しかしていない。その影響から従業員も徐々に削減されて、閉鎖が決まった時は3000人の従業員に加え、関連企業400社、凡そ2万人の雇用が喪失されることになった。

 2021年、ワクチン接種なども始まったが、まだ先行きは不透明なままだ。果たして今年、観光立国としてのスペインはどこまで立ち直れるのか? 

<文/白石和幸>

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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