タンカーへのテロ攻撃めぐり、米とイラン“真っ向対立” ホルムズ海峡封鎖なら世界経済“大打撃” 識者「日本がリーダーシップを」

 イラン沖のホルムズ海峡付近で13日発生した日本などのタンカー2隻へのテロ攻撃をめぐり、米国とイランの主張が激突している。米国は「イランの責任」に言及し、イランは関与を否定した。安倍晋三首相の歴史的なイラン訪問で、世界が期待した緊張緩和が失速しかねない事態だ。「中東の混乱」継続を狙う勢力の存在とは。原油輸入の9割近くを中東に依存する日本にとっては、ホルムズ海峡の情勢不安は原油価格の高騰につながり、日本経済を直撃しかねない。今年秋に予定される消費税増税の最終判断にも影響するのか。

 「イランに責任がある」「この地域のどの武装組織も、このように高い精度で活動できる資源や技量を持っていない」「安倍首相の外交努力を拒否し、日本のタンカーを攻撃することで日本を侮辱した」

 マイク・ポンペオ米国務長官は13日、国務省での記者会見で、イラン沖のホルムズ海峡付近で同日発生した日本などのタンカー2隻へのテロ攻撃について、情報機関の分析などをもとに名指しで批判した。

 これに対し、イランのハビブ国連次席大使は同日、「(関与を)強く否定する」と述べた。ニューヨークの国連本部で共同通信などに語った。

 イラン革命防衛隊のキャナニモガッダム・ホセイン元司令官も同日、「安倍首相の訪問を『反イラン宣伝』に利用する狙いで行われたもので、テロ組織が関与した」との見方を、産経新聞の取材に語った。

 両国の主張は、真っ向から対立した。

 国連安全保障理事会は13日、今回のタンカー攻撃に関する非公開会合を開いた。全参加国がテロ攻撃を非難したという。

 非武装のタンカーを狙う卑劣なテロ攻撃は13日朝(日本時間同日昼)、ホルムズ海峡近くで発生した。

 東京都内の海運会社「国華産業」が運航するタンカー「KOKUKA COURAGEOUS」(パナマ船籍、1万9349トン)と、台湾の石油大手「台湾中油」のタンカーが攻撃を受け、2隻とも火災が発生した。両船とも日本人は乗っていなかった。

 世界はこの日、イランに注目していた。

 「核合意」をめぐって米国とイランの軍事的緊張が高まるなか、両国首脳と深い親交を持つ安倍首相がイランを訪問し、同国の最高指導者、ハメネイ師と会談したからだ。

 安倍首相は会談で「軍事衝突は誰も望んでおらず、緊張の高まりを懸念している」と述べた。

 これに対し、ハメネイ師は、「核兵器を製造も所有も使用もしない。その意図はない、すべきではない」と語ったという。

 一瞬、緊張緩和を感じさせたが、ハメネイ師は会談後、「ドナルド・トランプ米大統領はメッセージを交換するに値する相手ではない。トランプ氏に返事はしない」との声明を出した。

 この直後、タンカー攻撃のニュースが飛び込んできた。

 テロ攻撃の、犯人と背景をどう分析すべきか。

 海洋防衛の専門家、東海大学海洋学部の山田吉彦教授は「基本的に、外見から日本に関係するタンカーかどうかは分からない。ただ、安倍首相のイラン訪問を意図的に狙って海上テロを起こしたのではないか。『アラビア半島周辺、ホルムズ海峡の危険度が高い』ことを示そうとする、イスラム過激派が起こしたのだろう」と語った。

 ホルムズ海峡は、原油と石油製品を合わせて日量1800万バレル以上が運ばれる「世界エネルギーの大動脈」だ。この地域で軍事的緊張が高まり、タンカーの航行に支障が出たり、万が一、「海峡封鎖」といった事態になれば、世界経済、日本経済は大打撃を受ける。

 ■タンカー攻撃 米中首脳会談に影響か

 世界経済に詳しい上武大学の田中秀臣教授は「今回のタンカー攻撃で、原油の先物価格が上昇するなど、原油価格の不安定化が予想される。日本経済への悪影響も否めない。米中貿易戦争とは別枠で、世界経済に赤信号が灯った」といい、続けた。

 「これが、大阪で開かれるG20(20カ国・地域)首脳会合前に起こったことが興味深い。原油価格の高騰で、イランやロシアなどに原油を依存している中国経済に悪影響が出る。日米欧による『対中包囲網』や、香港でのデモ激化もあるなか、G20に合わせた米中首脳会談がまとまらず、決別する可能性もあるのではないか。習近平体制の先行き不安定化も考えられる。日本政府も、経済シナリオの変更を求められるかもしれない。安倍首相が『消費税増税延期』を判断しやすい環境になるのではないか」

 ホルムズ海峡では、過去にもテロ被害が相次いでいる。

 2010年7月には、航行中の商船三井の原油タンカーが爆発とみられる衝撃で損傷した。今年5月には、サウジアラビアが自国のタンカーが攻撃を受けたと発表した。この地域の安全をどう守るべきか。

 前出の山田教授は「イランと軍事的緊張を高めているため、米国が主導権を持って同海域を警戒監視するのは難しい。今こそ、国際的な協力態勢のもと、日本がリーダーシップを発揮すべきではないか。アフリカ東部ソマリア沖のアデン湾での海賊対処活動では、海上自衛隊のP3C哨戒機が活躍している。世界のために、日本が衛星や航空機を使って警戒を強化すべきだ」と語っている。

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