【緊迫する世界】「ボルトン氏解任」で世界の流れに変化…金正恩氏は安堵か すべての外交が「損得だけ」になり…世界ますます混迷、安倍政権はどう動く?

 9月10日、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、ドナルド・トランプ大統領に解任された。その直後、世界の流れは変わった。ホワイトハウスの政治力学も大きく変わった。

 喜んだのは3人だ、トランプ氏の娘婿で、「イスラエルの代理人」と言われるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問と、北朝鮮との関係回復で政治的得点を挙げようとするマイク・ポンペオ国務長官、中国とディール(取引)して市場を落ちつかせたいスティーブン・ムニューシン財務長官である。

 ボルトン氏解任直後の14日、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの石油施設2カ所が攻撃を受けた。

 イエメンの親イラン武装組織フーシ派が犯行声明を出したが、ポンペオ氏はイランがやったと断定した。トランプ氏は「イランが関与したんだろう」と述べたが、「(軍事衝突は)避けたい」と強調した。トランプ氏の計算では、戦争は金もうけにならないのだ。

 一方、この攻撃で、サウジアラビアは石油日量生産能力の半分(世界石油供給量の約5%)の生産停止に追い込まれ、石油原価は最大20%も上昇した。米国とロシア、中東の石油産油国には、うれしいニュースだ。

 イランの犯行となれば、クシュナー氏はイスラエルの肩を堂々と持つことができる。トランプ氏は、イスラエルの総選挙後、パレスチナ問題の「和平プラン」を発表する。クシュナー氏が仕切るので、和平プランはイスラエルに有利なものとなるだろう。

 そうなれば、パレスチナは猛反発し、湾岸諸国のイスラム教徒も黙っていない。再び、国際テロ組織アルカーイダのような、反米、反イスラエルの過激派組織が生まれ、中東情勢が不安定になる可能性は否定できない。それを予測してか、米国はイスラエルとの軍事同盟を結ぶと発表した。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長も安堵(あんど)しているだろう。ボルトン氏が去ったことで米国の先制攻撃はなくなったと読み、米朝首脳会談に期待を持つだろう。

 トランプ氏が、北朝鮮とディールして「朝鮮戦争の終結宣言」を出すかどうかは不明だが、お膳立てをするポンペオ氏の役割が重要となる。ポンペオ氏は来年の上院議員選挙に、地元カンザス州からの出馬を検討していると伝えられている。出馬前に功績を挙げたいのは否定できまい。

 理想主義だったネオコンのボルトン氏が解任されたことで、ホワイトハウスから主義主張を持つ人物がすべて去った。トランプ氏と同じく利害関係で動く人物だけが残り、トランプ氏に意見を言う者もいない。結果、米国政治は、損得だけで決められていくことになるだろう。世界はますます混迷し、何が起こってもおかしくない。

 緊迫した世界で、安倍晋三政権がどう動くかが問われる。

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