北、IT労働者を海外派遣 国連報告書案 サイバー要員に数百人

 【ニューヨーク=上塚真由】北朝鮮が数百人のIT技術労働者を海外に派遣して外貨を稼ぎ、現地でサイバー攻撃などの違法行為にも当たらせていることが9日、国連の報告書原案で分かった。国連外交筋は、北朝鮮が核ミサイル開発のために行う違法な資金調達の中で、サイバー攻撃の比重がますます大きくなっていると警戒を強めている。

 サイバー攻撃の実態を指摘したのは、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会専門家パネルがまとめた中間報告書。安保理理事国などでの議論や修正を経て来月にも公表される見通し。

 産経新聞が内容を確認した報告書原案によると、北朝鮮の弾道ミサイル開発を主導してきた朝鮮労働党の軍需工業部が、傘下にある貿易会社を利用してソフトウエア開発者などIT関連の技術労働者を派遣。数百人の労働者の派遣先は欧州、アジア、アフリカ、中東と多岐にわたる。

 北朝鮮のIT労働者は月平均で3000〜5000ドル(約31万〜約53万円)を稼ぎ、その大半を北朝鮮に送金。派遣先の会社は実際には北朝鮮が運営しているが、現地人を名義上のトップに据えて隠蔽工作を行っている。こうした労働者は不正ではないITの仕事のほかに暗号資産(仮想通貨)を違法に得るなどサイバー攻撃にも関与しているという。

 報告書は、北朝鮮がこれまでにサイバー攻撃を通じて最大で20億ドル(約2115億円)を違法に得た疑いがあり、核兵器など大量破壊兵器の開発資金に使われた可能性があると分析。攻撃を受けたのは韓国やインド、チリ、バングラデシュ、ナイジェリア、ポーランドなど17カ国におよび、近年は、銀行よりも追跡が困難で監視が緩い仮想通貨取引業者への攻撃が目立っている。

 北朝鮮のサイバー人材育成にも言及されている。非常に若い年齢で人材を選抜するなど綿密な育成プロセスを取り、特別な訓練を施しているという。

 報告書は、洋上で船から船へ石油精製品を移し替えて密輸する「瀬取り」も引き続き横行しており、制裁違反だと強調。安保理決議で定めた石油精製品の年間輸入量50万バレルを今年4月までに超えたと指摘した。北朝鮮の主要産物である石炭については、輸出が安保理決議で全面禁止されているにもかかわらず、1〜4月に少なくとも127回、計93万トンが輸出された。

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