【アメリカを読む】元特別検察官から「爆弾発言」引き出せず トランプ氏弾劾に国民の関心今一つ

 ロシアによる米大統領選干渉疑惑を捜査したモラー元特別検察官が7月、議会証言に臨んだ。トランプ大統領を追及する材料を得ようと意気込んだ野党民主党だったが、モラー氏から「爆弾発言」を引き出すことはできず、「ショーは失敗」(米紙ウォールストリート・ジャーナル)と評される結果に。ただ同党は今後も追及する姿勢を崩しておらず、政権との攻防はなお続きそうだ。

約6時間の証言

 モラー氏に対する公聴会は7月24日、民主党が多数を占める下院の司法委員会、情報特別委員会でそれぞれ行われ、計約6時間に及んだ。

 司法委では、4月に公表された捜査報告書で「免責するものではない」としたトランプ氏による捜査への司法妨害について、情報特別委はロシア側とトランプ陣営との共謀疑惑をそれぞれ集中的に取り上げた。

 司法妨害の疑いをめぐっては、トランプ氏を訴追しなかったことと、現職大統領を訴追しないという司法省の指針との関連性を問いただす質問が何度も繰り返された。

 民主党議員から「指針があったため訴追しなかったのか」と問われ、モラー氏は「その通りだ」と返答。指針がなければ「有罪」だったとの印象を与え、同党は今後の追及材料を得たかに見えたが、モラー氏は午後の証言で「大統領が罪を犯したかどうかの判断には至らなかった」と発言を修正してしまった。

 他の多くの質問については、モラー氏は「答えられない」「報告書を参照してほしい」を連発し、米CNNテレビ(電子版)によると、返答の拒否は206回に上った。

国民は弾劾に否定的

 捜査報告書の内容を大きく超えるものはモラー氏から語られないまま議会証言は幕を閉じた。モラー氏はもともと「報告書が私の証言」としており、新たな証言への望みは薄かっただけに、ウォールストリート・ジャーナルは「民主党はなぜモラー氏に公の場に出したのか」と疑問を呈した。

 米キニピアック大が7月30日に発表した世論調査結果によると、議会が大統領解任に向けた弾劾手続きに入るべきかどうかについて、「そうは思わない」が60%で、「そう思う」の32%を上回った。

 民主党の意気込みとは裏腹に、米国民の疑惑への関心も今ひとつだったようだ。ロイター通信が調査会社ニールセンの集計として報じたところによると、全米で中継映像を見たのは約1290万人。

 トランプ氏を批判したコミー前連邦捜査局(FBI)長官の議会証言や、性的暴行を受けたと女性が告発したカバノー連邦最高裁判事に関する指名承認の公聴会など、トランプ政権下で注目を集めた他の議会証言の視聴者数を下回る結果だった。

トランプ氏は勝利宣言

 「わが国、共和党、そして私にとって非常に素晴らしい日だ」と勝利宣言したトランプ氏は「捜査は魔女狩りだ」と繰り返し、「民主党は大敗した。同党にとっては悲惨な日となった」と揶揄(やゆ)してみせた。

 民主党内では急進左派を中心にトランプ氏の弾劾手続きを進めるべきだとの強硬論が根強く、米CNNテレビ(8月2日付電子版)によると、下院の同党議員235人のうち少なくとも118人が賛成したという。

 ただ、手続きに入れば下院を奪還した昨年の中間選挙で取り戻した中間穏健層の支持を失いかねない。そもそも大統領の罷免は、共和党が多数派を占める上院で3分の2以上の賛成が必要で、実現は事実上、不可能だ。

 ナドラー下院司法委員長(民主党)は、CNNテレビで「個人的にはトランプ氏は弾劾に値すると思う」としながらも、「問題は十分な証拠を国民に示せるかどうかだ」と述べ、弾劾手続きには慎重な姿勢を示している。

 民主党指導部は捜査情報などの開示を裁判所に訴え、疑惑の解明を続ける方針だが、政権側が拒否して法廷闘争になる可能性が高いとみられる。米誌ワシントン・エグザミナー(電子版)によると、弾劾に否定的なペロシ下院議長は、来年の大統領選の日程などが立て込んでくるまで党内を押さえ込み、弾劾手続きが事実上時間切れとなるのを狙っているようだ。

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