香港抗議デモ トランプ政権、中国の大幅譲歩狙う

 【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米政権は、香港での抗議デモに関し、中国の習近平体制が香港に約束された「一国二制度」と「高度の自治」をデモの武力鎮圧などを通じて崩壊させることを強く警戒している。米政権としては、中国が今回のデモの契機となった「逃亡犯条例」改正案を撤回するなど大幅譲歩する形での「平和的収拾」に持ち込ませたい考えだ。

 トランプ大統領は14日、中国が香港との境界に武装警察部隊を集結させているとの情報を受け、ツイッターで「習近平国家主席が香港問題を早急かつ人道的に解決しようと思えば、そうできると信じて疑わない」と述べ、デモの強制鎮圧を避けるよう促した。

 国務省報道官も14日、中国武装警察の集結を「深く憂慮する」との声明を発表した。声明はまた、全ての当事者に「暴力の自制」を要請しつつ、中国政府に対し、香港返還をめぐる中英共同宣言でうたわれた、香港の「高度な自治」や「言論・平和的集会の自由」を順守するよう要求した。

 声明はデモについて「自治が浸食されていくことへの香港市民の広範かつ正当な懸念を反映している」と理解を寄せつつ、「デモの黒幕は米国だ」とする中国の主張を「断固として否定する」と強調した。

 事態を受け、米国内では1989年に北京で中国当局が民主化運動を武力弾圧した天安門事件の再現を恐れる声も強まっている。

 下院外交委員会のエンゲル委員長(民主党)とマッコール筆頭理事(共和党)は14日、声明を出し、デモを武力で鎮圧すれば国際的非難と迅速な制裁行為が待っていると警告し、「天安門のような過ちを起こしてはならない」と訴えた。

 一方、中国非難の声が超党派で強まる中、トランプ氏は今月、デモを「暴徒」と呼び、香港は中国の一部なので双方で解決すべきだと発言するなど、問題に距離を置く姿勢も目立つ。

 トランプ政権は、9月1日に発動する中国への「第4弾」の制裁関税の一部を12月に延期して貿易交渉の前進を図っており、同氏としては現段階で米中対立の戦線を香港問題にまで拡大させたくない思惑があるとも読み取れる。

 これに対しペロシ下院議長は「商業上の利益を理由に中国の人権問題を批判しないのであれば、米国は他の問題でも声を上げる道徳的権威を完全に失うことになる」と批判した。

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