トランプ政権、米軍残留で「新シリア戦略」推進へ

 【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米政権による急襲作戦でイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)指導者、アブバクル・バグダディ容疑者が死亡したことを、政権はIS壊滅作戦の成功を決定づける「重要な勝利」(エスパー国防長官)と位置づけている。トランプ大統領は、先に表明したシリア北東部からの米軍撤収の決定を全面転換し、数百人規模の米軍兵力を残留させてISの再興を押さえ込む「新シリア戦略」を進めていく考えだ。

 トランプ氏は27日の記者会見で、死亡したバグダディ容疑者の隠れ家からISの内部情報や今後の計画などに関し書かれた資料を押収したと明らかにし、ISを根絶するための重要な手がかりとして活用していく方針を示した。

 トランプ氏はまた、先に激しい批判を浴びたシリア北東部からの米軍撤収を取り消し、米軍部隊を残留させる方針を決めたことに関し、「(北東部の)油田を守るためだ」と説明した。 ISは支配地域を失うまでは石油取引を重要な資金源としてきた経緯がある。トランプ氏は、油田をISから防衛することは「ISの勢力拡大の阻止につながる」と強調した。

 北東部の油田地帯は現在、クルド人勢力を主体とするシリア反体制組織「シリア民主軍」(SDF)の勢力圏下にある。SDFとしては産出される石油の取引で得た収入でISやシリアのアサド政権、トルコに対抗できる兵力の確保が期待できるようになる。

 一方、ロシアとイランも北東部の油田地帯の確保を狙っているとされ、米軍のプレゼンスはシリアでの両国による影響力拡大の牽制にもつながる。

 現地からの報道によると、十数台の米軍車両が26日、イラクからシリア入りし、北東部の油田地帯に向かった。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると北東部に展開する米軍部隊は500人規模となる見通しだ。

 トランプ氏の米軍撤収に反対し、油田防衛の重要性を訴えていた共和党のグラム上院議員は27日、記者団に対し、米政権の新戦略は、米国がコスト負担を負わずに地域の安定化を実現できるとして「(中東戦略の)新たなモデルを構築した」と称賛した。

 一方、トランプ氏としては、急襲作戦の成功を強調し、いわゆるウクライナ疑惑をめぐる民主党や世論の批判をかわしたい気持ちも強いとみられる。

 しかしトランプ氏は、重要な軍事作戦の実施の際に慣行となっている議会指導部への事前連絡に関し、「情報漏れ」を恐れて同党のペロシ下院議長に教えなかったことを明らかにした。ペロシ氏は猛反発しており、新たな与野党対立の火種となりそうな情勢だ。

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