バグダディ容疑者死亡 ISに動揺も脅威は拡散

 【イスタンブール=佐藤貴生】イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の象徴的存在だったアブバクル・バグダディ容疑者の死亡が、ISに大きな動揺を与えることは間違いない。ただ、ISの戦闘員らはすでに世界に分散し、各地でテロ組織とのネットワーク構築を進めているとされ、脅威はむしろ拡散している危険性がある。

 ISをめぐってはこれまで、バグダディ容疑者の下に設置された10人前後の評議会による集団指導体制が取られている−などと伝えられてきた。幹部にはフセイン政権期のイラク陸軍士官らが多く含まれる。同容疑者がISの精神的支柱なのは確かだとはいえ、その死が致命的な打撃となるかは不透明だ。

 半面、世界各国はすでに、ISの戦闘員らが構築を目指す国際規模のテロネットワークをどう封じ込めるかという課題に直面している。アジアやアフリカではISに忠誠を誓う組織がいくつも存在しており、国連は今夏、ISが数百億円規模の資金を基にこうした組織との連携強化を進めているとの報告書を出した。

 一方、トランプ米大統領は27日、同容疑者の死亡発表と合わせ、シリア北東部の油田地帯を「ISから守る」ため、小規模な米軍部隊の駐留を継続させるとの考えを示した。先に発表したシリア北部からの撤収に対し、IS掃討で米軍と共闘してきたシリアのクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)を見捨てるべきではないとの批判が米国内で高まったのを受けてのものとみられる。

 そのSDFは27日、米軍との「共同作戦」でバグダディ容疑者の潜伏先に関する情報収集にあたったと述べ、米軍との結びつきの強さを誇示した。

 シリアをめぐっては、SDF排除のために軍事侵攻したトルコと、シリアへの影響力を強めるロシアが北部国境地帯を合同でパトロールすることなどで合意。米国の「不在」を前提とした動きが進んでいる。

 だが、ここにきてバグダディ容疑者を死亡に追い詰める成果をあげた米国が、対ISの名目でシリア政策を転換させれば、トルコやロシアとの間で新たな摩擦が生じる可能性もある。

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