【緯度経度】対中政策、日米に相違 古森義久

 米国のアジア関連の専門家集団が日本と米国の対中政策の相違がトランプ、安倍晋三両政権の間に対立を生み、日米同盟の根幹にまで影響を及ぼす危険がある可能性を指摘した。

 ペンス副大統領が最近、発表した対中新政策でも安倍政権の政策とのギャップが明らかとなり、今後の安倍政権にとってトランプ政権との対中姿勢の調整が重要課題ともなりそうだ。

 ワシントンの民主党系大手研究機関ブルッキングス研究所は10月下旬、「パワー大競合時代の日本」と題する報告書を公表した。同研究所外交政策部長のブルース・ジョーンズ氏を中心に計7人の中国、日本、東アジアなどの専門家の研究員が長時間、討論した記録をまとめた内容だった。

 この討論は米国にとって東アジアでは最重要の同盟国とされる日本が中国や朝鮮半島などの変動に対しどんな対外戦略をとるのか、米国への影響を主体に論じていた。

 日本へのチャレンジではまず中国の軍事がらみの攻勢として中国の武装艦艇が尖閣諸島の日本領海に恒常的に侵入してくる現実が警告された。ただしジョーンズ氏らからは尖閣が中国の武力攻撃を受けた場合、トランプ政権が「中国との全面戦争を覚悟して日本の無人島を守るかどうか」という疑問が提起された。

 同討論報告書がさらに強調したのはトランプ政権の現在の中国との対決政策に日本が同調しておらず、そのギャップが日米対立につながる危険性だった。中国専門家のリチャード・ブッシュ氏は「安倍政権はトランプ政権のいまの経済面の中国との対決政策に同調しておらず、米中対決がさらに激化すれば、トランプ政権はまず日本の企業に対中取引をやめることを望み、さらに日本政府に明確な協調を迫るだろう」と述べた。

 日米の対中姿勢の相違については東アジア安保問題の専門家ライアン・ハス氏が「中国への対応の違いを原因として日本が米国との距離をおくシナリオ、日本がさらに中国に接近するシナリオも考えられる」とも提起した。

 安倍政権は最近、「中国との関係は完全に正常になった」と言明し、対中交流全体を拡大する方針を明示した。この姿勢はトランプ政権の「協力から競合へ」という標語の下での中国の対外膨張の抑止政策とは正反対であり、米国の政策の否定にもつながりかねない。

 トランプ政権の強硬姿勢は10月24日のペンス副大統領の対中新政策演説でも改めて明示された。「中国は昨年よりももっと攻撃的になった」と断じ、「経済関与だけでは専制国家の中国を自由で開放な社会にすることはできない」とも副大統領は宣言した。米中関係も日中関係もまず対話や交流を優先すべきだという安倍政権の言明とは逆だった。

 ただし安倍政権もトランプ政権も対中政策のこの根本的ともいえる相違をまだ認めてはいない。その状況に対して反トランプ志向の民主党系シンクタンクの専門家たちが両国の差異をいち早く認めて、その結果、起きうる日米離反までを論じたという事実は日本側としても重視すべきだろう。

 この民主党系専門家たちとペンス副大統領とでまったく一致していたのは尖閣諸島への中国の軍事攻勢の危険だった。この点も安倍政権は中国に対してなにも提起していない。(ワシントン駐在客員特派員)

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