トランプ氏、香港人権法の署名成立で苦しい決断 「自治・人権」と「対中関係」両にらみ

トランプ氏、香港人権法の署名成立で苦しい決断 「自治・人権」と「対中関係」両にらみ

トランプ氏、香港人権法の署名成立で苦しい決断 「自治・人権」と「対中関係」両にらみの画像

 【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領が「香港人権民主法」を署名成立させたのは、米中関係の最重要懸案である貿易交渉での合意は目指しつつ、香港の自治や住民の人権を侵害する行為は米政権として容認しないとの立場を中国の習近平体制に明確に打ち出す狙いがある。ただ、同法の成立が貿易交渉に悪影響を及ぼす恐れは排除できず、トランプ氏にとっては苦しい決断となった。

 トランプ氏は人権民主法案に関し、拒否権を行使するか、署名をせずに来月3日に自然成立させることで法案への「反対」姿勢を中国に示す選択肢もあった。

 しかし、いずれを選んだとしても、来年の大統領選でトランプ氏の再選阻止を目指す民主党から中国への「及び腰」姿勢を非難されるのは避けられない。

 しかも、仮に拒否権を発動しても、上下両院で3分の2以上の議員が再び賛成すれば法案は成立する。法案はほぼ全会一致で両院を通過しており、拒否権が覆されるのは確実だった。

 また、署名せずに自然成立させたとしても、中国が反発してくることに変わりはなく、同氏としてはむしろ、進んで署名することで中国に対して決然とした姿勢を示した方が得策と判断したとみられる。

 24日実施の香港区議選で民主派が圧勝したことも、トランプ氏を署名に傾斜させた公算が大きい。

 トランプ氏は一方、署名に際して発表した声明で同法について「一部の条項が大統領に憲法上、保障された外交政策遂行上の権限に干渉している」と主張して内容への不満をにじませ、運用には慎重を期する立場を示した。

 同法は、香港経済に依存する中国に対し、香港への優遇措置の停止をちらつかせて圧力をかけることを狙ったものだ。

 ただ、実際に優遇措置が停止され、香港が国際商業都市としての特色を失った場合、現地に展開する米企業も打撃を受ける恐れが高い、との指摘もある。

 国務省によれば、香港には約8万5千人の米国民が居住。米企業の数は約1300社にのぼる(いずれも2018年7月現在)。貿易収支では、米国はここ数年、貿易相手国・地域の中では香港で最大の黒字を記録している。

 トランプ氏が最後まで同法を成立させるかどうか態度を明確にしなかったのは、こうした事情も勘案していたとみられる。

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