冷戦終結30年 米国「民主的世界秩序」への転換点

 1989年のマルタ会談は、米ソ首脳が「対話と協調」に基づき、冷戦構造を超えた新たな2国間関係を築くことで合意したという意味で、歴史の転換点となる会談だったといえる。

 中でも、冷戦終結後の世界の流れを方向づけたのが、ソ連のゴルバチョフ書記長が会談で、東側世界の民主化を容認する発言をしたことだ。

 会談の概要をまとめた米国務省の機密指定解除文書によると、「ゴルバチョフ氏は、西側が長年にわたり大切にしてきた民主主義的価値観は全人類にとっての標準となるべきだ、と率直に認めた」とある。

 米国と世界の勢力を二分してきたソ連が91年に崩壊し、米国は「世界唯一の超大国」として民主主義を基調とした新たな世界秩序の牽引(けんいん)役に収まる。

 その後、冷戦の「置き土産」ともいえる地域紛争や民族紛争、2001年の米中枢同時テロを受けた「テロとの戦い」を経て米国が改めて直面するのは、民主主義的価値観や規範に基づく国際秩序を脅かす独裁・権威主義勢力だ。

 とりわけ、東西冷戦の終結に伴う共産主義ブロックの崩壊をよそに共産主義体制を堅持してきた中国と北朝鮮は、米国にとり最大の頭痛の種だ。中国を国際社会に迎え入れれば「責任ある大国」として国際規範に基づいて振る舞い、やがて民主化するとの言説は、今や完全な幻想に終わった。

 また、北朝鮮をはじめ複数の途上国に核拡散を許したことは、冷戦後の米国と国際社会にとって重大な失策といえるだろう。

 さらに、強権体制で国内を掌握し、「強いロシア」を唱えて周辺国を脅かすプーチン露大統領の態度は、東西協調や民主化と改革、情報公開を唱えたゴルバチョフ氏以降の路線の完全否定に他ならない。

 こうした中、自由世界は「民主主義の旗手」としての米国に引き続き大きな期待を寄せている。香港情勢に絡みトランプ大統領が成立させた香港人権民主法は、中国の習近平体制および香港政府と戦う香港市民に大きな勇気を与えた。

 また、トランプ氏の「同盟軽視」と受け取られがちな発言の一方、米政権は中露などに対抗する同盟諸国のネットワーク関係の強化を積極的に進めている。

 現行の世界秩序を仮に「マルタ体制」と呼ぶとすれば、その意義は今日も全く薄れていないと言っていい。(ワシントン支局長 黒瀬悦成)

関連記事(外部サイト)