【コロナ禍】過激な言動が話題 ブラジル「ボルソナーロ大統領」の意外な人気の秘密

【コロナ禍】過激な言動が話題 ブラジル「ボルソナーロ大統領」の意外な人気の秘密

ボルソナーロ大統領(Isac Nobrega/PR/Wikimedia Commons)

「新型コロナは軽い風邪」、商業活動の規制に関しては「犯罪だ。ブラジルを壊している」と発言。商業や市民の外出の自粛を主張した保健相はクビに……。ブラジルのボルソナーロ大統領(65)の過激な発言と行動が世界の注目を集めている。

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 ブラジルの新型コロナ感染者は4月19日現在3万8654人、死者は2462人に達している。前日から感染者は2055人、死者は115人増えた。にもかかわらず、ボルソナーロ大統領は同日、首都ブラジリアでマスクを着用せず数百人の集会を開き、演説を行った。演説中、咳き込むシーンもあったが、聴衆を愛国者と呼び、各州で実施しているロックダウン(都市封鎖)を攻撃したのだ。

 ロックダウンを最初に行ったのは、コロナ感染の中心地となっているブラジル南東部のサンパウロ州とリオデジャネイロ州だった。その後、他州も独自に商業施設の規制を行うようになった。

「ロックダウンによって、市民は不要不急の外出を禁止。病院やガソリンスタンド、スーパーマーケット、薬局など生活に必要なお店をのぞき、営業停止です。当初は3月24日から始めて、4月22日に終了する予定でした。ところが感染拡大が止まらないため、5月10日まで延長になりました」

 と解説するのは、ブラジル在住の日本人ジャーナリスト。

「ロックダウンも1カ月近くになりますので、市民は疲弊してきています。そのため、ロックダウンに異を唱えるボルソナーロ大統領を支持する人がでてきました。最初は『大統領は何を言ってんだ』と馬鹿にしていた人たちが、ロックダウンで生活が苦しくなって、『彼の言っていることは正しいのではないか』と思うようになったのです。現在、国民の3〜4割が支持派ですよ。一方、連邦議会や野党は、ロックダウンに賛成しています。ブラジル国内では、大統領支持派とロックダウン賛成派とで、意見は真っ二つに分かれています」

 マンデッタ保健相は医師出身で、記者会見で科学的知見に基づいてロックダウンの必要性を訴えると、人気が急上昇。それに対して大統領は、「スターになった」「謙虚さを失った」と痛烈に批判、解任したという。


■ギャングが外出禁止のメッセージ


 そもそも、ボルソナーロ大統領はどんな人物か。

「いわゆる極右の政治家で、1964年のカステロ・ブランコ将軍の軍事独裁政権を支持しています。LGBTの権利は認めていません。2018年に社会自由党から大統領選に出馬しましたが、党と喧嘩して離党。現在は無所属です。アメリカのトランプ大統領の信奉者で、昨年1月に大統領に就任して以来、4回訪米。そのため、“ブラジルのトランプ”と呼ばれています。コロナ感染には無頓着で、毎日のように外出し、街でパンを食べたり、店の人と一緒に写真を撮っています」(同)

 国民の中には、そんな大統領を支持する動きが出てきたのだ。

「4月11日と12日、サンパウロの中心街パウリスタ通りで、ロックダウンに反対するデモが行われました。11日は通りを車でふさぎ、『ドリア知事(サンパウロ州)は辞めろ、われわれを働かせろ』とシュプレヒコールを上げています。車が1000台、オートバイが2000台、トラックが200台参加しています。12日は大統領支持者約200人が参加して、ロックダウンの中止を訴えました」(同)

 とはいえ、コロナの感染はまだまだ拡大しそうだ。特に、サンパウロやリオデジャネイロにあるスラム街(ファベーラ)は、今後コロナ感染者が爆発的に増えるかもしれないと言われている。

「ファベーラは住宅が密集している貧困街で、小さな家に10人ほどが暮らしているため、感染爆発が危惧されています。リオデジャネイロ州は、ファベーラに住む高齢者を街中のホテルに移動させることを決めました。ところが高齢者は家族と離れたくないという理由で、ホテルに移った人はごくわずかでした。ファベーラは犯罪組織の縄張りで、当局の権限が及ばない無法地帯です。このままではファベーラの住民にコロナが蔓延するのは目に見えているため、ギャングが車で住民に外出禁止を促すメッセージを流していますよ」(同)

 ファベーラのような貧困地帯のインフラは、まともに整備されていないという。

「ブラジル当局によると、水道を利用できない人は約4000万人もいます。人口の半分となる1億人は、下水道なしで暮らしています。コロナ感染を防ぐため、手を洗う水さえない人がこんなにいるのですから、コロナを防ぐ手段がありません」(同)

 国内がそんな状況にありながら、ボルソナーロ大統領は4月18日、ブラジリアで行った集会で「新型コロナウイルスには(国民の)70%が感染する。どうすることもできない」と発言。各州が実施しているロックダウンの緩和を求めているのだ。

「ブラジルは、財政基盤が脆弱な発展途上国ですから、このままロックダウンが続けば経済は破綻します。感染のピークは5月と言われていますが、感染拡大が収束せずにロックダウンが2、3カ月も続けば、街は失業者で溢れかえることになるかもしれません」(同)

 感染防止か、経済優先か。どちらを選んでもブラジルは大変なことになりそうだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年4月26日 掲載

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