「中国製造2025」の成果! 世界の自動車覇権を狙う共産党の野望

EV(電気自動車)の価格はガソリン車に比べ高いですが、そのうち4割が車載バッテリーの価格といわれます。EVの心臓部であるバッテリーのシェアを握る者が、これからの世界のEV覇権を握るといっても過言ではありません。今、その最前線に中国がいます。このまま世界がEV化すると中国が儲かる仕組みを、ここにご紹介いたします。

今、注目される新産業「EV」(電気自動車 / Electric Vehicle)をテーマに、加藤康子氏(元内閣官房参与)、池田直渡氏(自動車経済評論家)、岡崎五朗氏(モータージャーナリスト)の3名が、脱炭素と日本のものづくり産業の大問題を徹底討論!

▲電気自動車を通して見えてくる日本の産業や政治の問題点を徹底討論

※本記事は、加藤康子×池田直渡×岡崎五朗:著『EV推進の罠 「脱炭素」政策の嘘』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■EVとバッテリーの覇権を握りたい中国?

岡崎 バッテリーを「いかに安く作るか」というのも重要ですね。

今、一番安い中国製のバッテリーの値段は、1kWh(キロワットアワー)当たり100ドルと言われています。この価格、日本ではまだできていないです。

では、なぜ中国では100ドルでできるのか? 材料費を考えれば「いくらなんでも、その値段は無理でしょ?」っていう疑問が、中国製バッテリーにはあります。

その秘密は、まず信頼性や安全性を極めて低い基準でOKとしていることと、中国共産党がバッテリーメーカーに巨額の補助金を出しているからなんです。

加藤 世界のマーケットシェアを取るために、中国共産党がバックアップしているわけだ。

岡崎 CATL(シーエーティーエル)という世界最大のバッテリーメーカーの本拠地は、福建省寧徳市なんですが、寧徳市といえば習近平のお膝元ですからね。めちゃくちゃ近い関係なんじゃないでしょうか。

▲CATL(寧徳時代新能源科技)のロゴ  出典:ウィキメディア・コモンズ

加藤 怖いですね。だから、EV化すると自動車産業が中国化していくわけですね。

岡崎 ええ。中国はEVを使って世界の覇権を握ろうと画策しています。

池田 だからね、日本が中国に呑み込まれないだけの策を打つことができたうえで、EV化するならいいんですよ。EVを作ってもバッテリーはちゃんと日本で賄える、という体制が整ってからやるんだったら。あるいは、電力の確保も含めて、それができるんだったら反対なんてしないんですが……。

岡崎 日本にあるバッテリーメーカーは、パナソニック以外にも、AESC(オートモーティブエナジーサプライ)っていうメーカーがあります。

ここは、日産とNECが共同で作った会社で、日産の「リーフ」に積んでいる安全性の高い、とてもいいバッテリーを作っていました。

けれども、日産とNECはこの会社を中国に売っちゃったんですね(2019年3月にエンビジョングループへ売却)。

加藤 なんということでしょう……。日産が20%、中国が80%資本と聞きました。中国は戦略に長けています。

岡崎 このとき、日本政府はこういった状況を見過ごし、これからの産業を保護するという政策は打たなかった。

逆に中国は、中国国内で売るEVには中国製のバッテリーを積まないといけない、というルールを作っていまして……。

池田 それ、WTO(世界貿易機関)的には真っ黒なルール違反です。無茶なルールを勝手に作って、まかり通っています。

岡崎 そうやって日本をはじめ、世界中からバッテリーのノウハウを自国に持ってきているわけですね。

加藤 今後EV化が進んで、特にRCEP(地域的な包括的経済連携)協定が締結されて、中国で生産されたEVが、アジアや世界に輸出されていくでしょう。これは、まさに自動車強国という覇権を狙っている中国の思う壺になりますね。

岡崎 ええ。だから、経済安全保障とかエネルギー安全保障とか、安全保障にもいろいろあるじゃないですか。そのうちの1つにバッテリー安全保障というのも。EVが増えれば増えるほど考えるべき問題で、そこを中国に握られてしまったら……。

加藤 まさに危ないですね。クルマだけの問題じゃなく、日本そのものの安全保障です。

池田 バッテリーの供給を絶たれたら、日本の基幹産業が倒れるわけですよ。だから中国とケンカもできなくなるわけです。なんでも言うことを聞くしかなくなってしまうんですよ。

加藤 そんな方向に舵をとろうとしている日本政府は大丈夫でしょうか。

岡崎 とくに小泉環境大臣。そして、菅首相、菅政権……。〔※2021年1月時点での発言。岸田政権での動向にも注目が集まる〕

池田 彼らはちゃんと状況を把握しているのか? あるいは、何か思惑があって誘導している可能性もある。

本当に日本の国民のための発言なのかもよくわからない状況で、政治家たちが海外で何かの約束をしようとしていることを、我々国民はどう受け止めるべきなのか。

岡崎 恐ろしいね。

加藤 まさしく日本の未来、日本の国益を考えていない。大変危険な状態だと思います。

■世界のバッテリー覇権争いシェアトップ「CATL」

池田 今、世界中の自動車メーカーがバッテリーの供給を受けているのは、多くが中国か韓国のメーカーです。

日本製はパナソニックが多いのですが、安全で品質が良いから、限られたところしかもらえないわけですね。世界の自動車メーカーはどこも欲しがっているけれども競争率が高い。

▲中国・韓国・日本のメーカーが上位を占める

加藤 中国のCATLは、ほとんどのドイツ車、BMW、ダイムラー(メルセデスベンツ)、VW(フォルクスワーゲン)のほか、ジャガー、ランドローバーをはじめ、テスラ、GM、トヨタ、ホンダ、日産、ボルボ、PSAグループなど、ほぼ全てのメーカーがCATLに出資して、育てていますね。ちょっとすごくないですか?

岡崎 育てているというよりも、彼ら自動車メーカーにとっては、もはや“ありがたく供給いただいている”という感じになっちゃっているんじゃないですか。

加藤 中国内ではCATL一強です。

池田 それは中国共産党の、まさに「中国製造2025」の成果ですよ。中国で売るクルマには、中国製のバッテリーを積まなきゃならないルールを課しているのです。だから、バッテリーを売ってもらえないと中国でビジネスができない。

加藤 EVの生産数を増やすということは、ひとえにCATLやBYDのバッテリーが増えていくことになりますよね?

岡崎 それに気付いたアメリカ、あるいはヨーロッパ勢は、大急ぎで自国内にバッテリー工場を建設し始めた……というのが2021年前半の流れですね。

加藤 でも、CATLも欧州に工場をどんどん作っているとか。

岡崎 そうですね。まさにバッテリー覇権争いが始まっています。

加藤 そう考えると、最初に中国の自動車産業のなかで、どこが育つかというと、バッテリーメーカーが育つ。

誰がEVで一番得するのかといったら、まさにこのバッテリーメーカーです。電池メーカーがまずは圧倒的に潤っていく、という構図になるわけですね。

岡崎 少なくとも日本で製造するクルマには、日本で製造したバッテリーを積むようにしていかないと、これは本気でまずいことになりますね。

池田 そういった経済安保の面でも大変重要なんですよ。

▲世界ではバッテリー覇権争いが始まっている 出典:chesky / PIXTA

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