「若者たち、自由すぎやしないか」韓国コロナリポート

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■飲食店への休業要請は一度もなかった

私はソウルで喫茶店を経営している。新型コロナウイルスの感染拡大以降、売り上げは若干落ちたと言えるが、もともと小商いなので事態はそれほど深刻ではなく、マスク着用や衛生管理に気を遣うこと以外は、普段と変わらず営業を続けている。

韓国ではこれまで一般的な飲食店に対し、休業や時短営業の要請がなされたことはなかったし、自粛すべきという社会的な雰囲気にもならなかった。店をしている者としては、非常にありがたいことだった。

飲食店はどこも客足が減っている。外国人観光客をターゲットにしたお店はかなり大変なようだが(実際、ソウルを代表する観光エリアの明洞〈ミョンドン〉では、閉店が相次いでいる)、地元客の方が多かった当店の場合は「意外とお客さんが来てくれる」と感じている。

喫茶店という業種は不要不急で、いつお客さんがゼロになってもおかしくないはずだが、ソウルのどこかで集団感染が起きた日も、そんなことにはならなかった。もちろん、感染を恐れ全く来なくなったお客さんも少なくないが。

なお韓国では、接客を伴わないバーや小規模ライブカフェも、一般飲食店のカテゴリーに入り、こうしたお店も基本的にはこれまで休むことなく営業を続けている(ただしライブイベントはずっと開催されなかった。6月後半頃から徐々にライブを再開しているハコもある)。

■感染者の増加と、つのる第2波への不安

2月末に発生した大邱(テグ)での大規模感染以降、徹底的な検査と隔離、カード利用履歴や監視カメラを活用した感染者の動線把握と情報公開で、コロナの抑え込みに成功してきた韓国。

4月下旬に新規感染者数が一桁となる日が続き、皆が安心したのも束の間、連休明けの5月6日に政府が防疫レベルを緩和した途端、梨泰院(イテウォン)エリアのクラブで再び集団感染が起きてしまう。そこから出会い系居酒屋、カラオケ、学習塾、配送センター、宗教施設、マルチ商法の販売所と、首都圏を中心とした様々な密閉空間で感染が続く。

6月下旬の現在も、その勢いは収まるところなく、毎日30~60人前後の新規感染者が報告されている。感染は徐々に地方都市へも広がっており、再度の大規模感染が憂慮される日々だ。

ソウル市は梨泰院クラブ感染直後の5月9日、クラブやルームサロン(接待のあるバー)など密の高い遊興施設(いわゆる夜のお店)に対し、集合禁止の名のもと営業を禁じた。

6月にはこれが段階的に解除される一方で、クラブ、ルームサロン、カラオケの他、フィットネスクラブ、学習塾、ビュッフェ式食堂などの「高リスク施設」に入場する際には、スマホでQRコードを提示することが義務となった。

施設利用者の個人情報を収集し、感染経路を把握するためだ。なおスマホ未所持の場合は、情報を用紙に記入しても良いらしい。

■クラブ、居酒屋…お祭り騒ぎの若者たち

感染は確実に広がりつつあるが、街の人々が危機感を高めているようには、あまり感じない。

ソウルで特に緊張感が高かったのは2月下旬から3月にかけて、そして梨泰院クラブ感染のあった5月前半で、当店でも売り上げは落ち込んだ。だが、その後は日を追うごとに平常運転に戻り、人の往来も活発になってきている。

街ではほとんどの人がマスクをしているが(5月末から、地下鉄やバスなど公共交通機関を利用する際のマスク着用が義務付けられた)、最近はマスクをしていない人も時々見かけるようになった。

6月最後の週末、若者が集まる弘大(ホンデ)エリアの中心部を歩いてみたところ、深夜にも関わらず大変なにぎわいだった。弘大ならではの状況とはいえ、若者たちは自由すぎやしないかと驚かされた。

営業しないクラブもまだ多いが、人数制限やQRコードの提示など政府の指針を守り営業を始めたクラブの前には、若者や西洋人が集っていた。

また弘大では、男女の出会いの場となる居酒屋が感染場所となり注目を受けたが、それらの店も行列をなすほどの人気だ。感染者が現れたことで有名な居酒屋にも人が集まっているのを見た時は、わが目を疑った。

大学前の公園には若者たちがたむろし、その一角ではダンスパフォーマンスも行われ、ちょっとしたお祭り騒ぎとなっていた。

■政府に信頼感。ただし支援金制度には外国人差別

増加する感染者数と国民の緊張感が比例しない背景には、経済活動にテコ入れしたい行政側の意向が反映されていると言える。

5月中旬には政府から、全ての世帯ごとに40〜100万ウォン相当(約4〜10万円)の「緊急災難支援金」が支給された。8月末までと使用期限のある電子マネーや商品券で支払われたため、国民の消費が増える結果に。

また6月には政府から映画割引券が配布され、閑古鳥が鳴いていた映画館に久しぶりに観客が戻った。

感染者数が増える中でも国民が消費活動を行えるのは、これまで都市封鎖も移動制限も行わずコロナを抑えてきた、政府に対する信頼感があるからのことだろう。

在住外国人としては、支援金制度に関して外国人差別が見られること(緊急災難支援金は、在住外国人では永住資格保有者及び家族内に韓国人がいる場合のみ対象となり、韓国人と結婚していない多くの外国人労働者は対象外となった)、外国人ばかり再入国の条件が複雑になってしまったことなど、残念な面も感じているが、ひとまず現段階において、健康面では大きな不安を感じず生活できている。

韓国の状況が今後どうなるか、蓋を開けてみないと分からないが、コロナ禍が一日も早く落ち着き、日韓の人々が自由に行き来できる日が戻ることを願っている。

〈清水 博之〉

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